伊藤真: なりたくない人のための裁判員入門



タイトル通り、裁判員制度に必ずしも賛成でない立場を取る筆者が、裁判に対する歴史や考え方の変遷をふまえて、なぜ裁判員制度が導入されるに至ったかという点や、筆者が裁判員制度に賛成しない理由についてを記した本。

裁判員制度の是否について考えるには、そもそも裁判とは何で、どうして裁判制度が必要なのかをきちんと理解する必要がある。現代日本の刑事事件の裁判という制度が犯罪の抑止効果や犯罪者の更正を目的として実施されているというのは、漠然とは分かっていたものの、きちんと整理して解説してくれていてとてもためになった。刑事裁判は、被害者やその遺族の怨念を晴らすためにあるわけではないという点は、ともすると「被害者感情」の議論に終始しがちな最近のマスコミの報道姿勢ばかりを見ていると見失いがちで、誤解のないように常に気をつける必要があると感じた。

以前のエントリーでも書いたように、日本人の裁判に対する関心や参加意識を向上するためにまず制度から変えていこうというやり方が本末転倒であるというのは、筆者とも相通じるところがあったし、裁判員制度について自分が疑問に感じていることに答えてくれていて非常にためになった。

総じて筋は通っていたように思うが、いまの裁判員制度に反対するあまり、最後の方では言いがかりっぽく聞こえる主張を多くされていたのは残念 (「推定無罪」の話をしておきながら自身が完璧な論証を出来ていないのを見るのは何とも歯がゆい)。

法学部とかで裁判制度とか法律について勉強した人から見れば初歩過ぎて面白くないとは思うが、自分のようなど素人には大変良い本だと思う。裁判員制度についてちょっと考えてみたいという人にはお勧め。

池上彰: そうだったのか! アメリカ



池上さんの「そうだったのか!」シリーズ。過去に読んだのは現代史だったけど、こちらはアメリカという国についていろいろな視点から解説をしてくれている。

相変わらずわかりやすい文章に加え、具体的な例を挙げて説明してくれているので興味を持ち続けながら読み進めることが出来る。個人的にはアメリカという国は、自由の国という側面を持ちながら自分たちだけが唯一の正義であると信じているような、ある種矛盾したイデオロギーを持った変わった国であるというように見ていたが、そうなるに至った経緯をうかがい知ることが出来て非常に参考になった。偏狭な押しつけ主義に終始したブッシュ前大統領と、変化を訴えて当選したオバマ大統領。この2人を比較するだけでもアメリカという国の性質が女実に分かるというものだろう。

著者が冒頭で
「私はアメリカが嫌いです。私はアメリカが大好きです。そんな矛盾した気持ちにどう折り合いをつければいいのか。そんなことを考えながらこの本を書きました」
と書いているように、おそらく多くの人がアメリカという国にある種の憧れを抱きながらも、どこかで反発する気持ちを持っている。今は経済的に不安要素が多くてちょっと疲弊している感じがするアメリカだけど、いずれ自浄作用が働いてまた成長していくんだろうし、日本もこうした自浄作用が働くと良いのになぁ、と思った。

これまでの現代史シリーズと比べるとターゲットを絞っている分、どうして内容の濃さに物足りなさを感じるが、それでもアメリカという国をよく知るためには非常に良い本だと思う。

裁判員制度の是否

今日、ついに新制度の下で初の裁判員裁判が開かれるに至った。

裁判員制度については是非も分かれるだろうし、そもそも決まったことに対して今更是否を問うても遅いが、自分としてはやっぱりちょっと割り切れない思いの方が強い。

自分は正直この制度が導入された背景をきちんと理解しているわけではないが、おそらく想像するに、1つは重大な判断を下す裁判という場に国民の総意を反映させる手段がこれまであまりにも乏しかったと言うこと、そしてもう1つは裁判に関する国民の関心を高めてより成熟した民主主義国家をめざそうということ、この2つが主な目的なんだろうと思う。確かに裁判所が誤った判断を下すことで国民に対する不利益が生じたり、政治的腐敗の温床となってしまうという危惧はあり、一定の歯止めの効果は期待できるだろう。しかし、いくら一般の国民が裁判に参加するとはいえ、あまねく国民の意見をたった6人の裁判員が代弁できるとは到底思えないし、普段から「決断」を下すのになれていない人が、他人の人生を左右するような重い決断を下すことを求められたときに、果たして本当に納得いく決断、あるいは国民の総意を反映させた判断が出せるものなのか。プロと比べて一般市民は考えが揺れやすいだろう。限りなく有罪が疑わしいという状況にありながら裁判員の心証を掴んだ被告側が無罪を勝ち取るという O. J. シンプソン氏の例を出すまでもなく、ちょっとした心証の差で有罪か無罪かが決まってしまうようでは、何のための裁判員制度か分からなくなってしまう。

裁判員制度を成功させるには、国民の意識の向上が必須だろう。ただ残念ながら今回導入された制度は「意識が向上しないなら制度を変えて無理矢理参加させよう」という意図が見え隠れしていて、どうにも本末転倒な感がぬぐえない。そもそもこの制度の導入が決まった時、制度の是非に関してどれだけの議論があったのか。4年前というと日本はまさに郵政民営化一色であったし、その裏でひっそりと決められてしまうようなやり方が、果たして成熟した民主主義で行われるべきことなのか。この制度についてはどうも納得がいかないことが多いように思う。

とはいえ自分も全然この制度についてちゃんと理解していないのもまた事実。ということで、最近裁判員制度に関する本を買ったので、読んだ後また感想を書きたいと思う。

itSMF conference 2009



7/30 と 31 の2日間、毎年恒例の itSMF Japan コンファレンス 2009 に出席してきた。昨年まではスポンサーとして展示会場のブースに張り付いていたが、残念ながら今年は出典を取りやめとなり、逆にこれは良い機会と思って積極的に講演を聴いてきた。

いろいろな会社での ITIL の導入事例を聞けるというのはこのイベントに参加する一番大きなメリットだと思う。今回も多くの事例を聞けて大変参考になった。また、事例そのもの以上に、どのような人たちがどのような考え方で導入を推進したのかという雰囲気を肌で感じることが出来たのもとてもよかった。

全体を通して感じたのは、ITIL はあくまでモデルであり、教科書通りにあてはめても必ずしもうまくはいかないという主張をされている方が非常に多かったこと。自身の会社のプロセスを無理矢理 ITIL に適合させるのではなく、既存のプロセスを活かしながら ITIL の概念をあてはめていくというやり方によって成功したという話が多かったように思う。特に、富士通総研の方の BCM についての話がきわめて印象的だった。ITIL では BCM があった上で ITSCM を進めるべきと説いているが、BCM を策定を待っていても何も始まらないので、IT 側で出来ることを検討する努力も必要であるとする氏の主張はきわめて現実的だと思う。もちろん BCM から ITSCM へという流れの方がスムーズだし、ベスト・プラクティスとしては正しいと思うが、それを鵜呑みにしているだけでは本当に正しい判断には行き着かないというのを非常に強く感じた。

その一方で、自社の既存のプロセスの存続を強く意識しすぎるあまり、重大な要素が欠落したまま「ITIL を導入しました」と言い張っているように思えるケースもあったように思う。こうしたケースでは、ITIL が言っていることを自分の都合の良いように読み替え過ぎているきらいがあり (自分たちではそれに気づいていないようにも思うが)、理論と実践のバランスが重要であるということに改めて気づかされた。

個人的にはガートナーの講演に一番期待していたのだが、期待が大きかった分あまり満足できずちょっと残念。山野井さんとしては「ベンダーも顧客ももっとお互いを信じあわないとダメだ」というメッセージを双方に伝えたかったのだと思うが、ではどうすれば良いかという点がちょっと理想論的な感じがして弱かったかな。

全体としては、基調講演も自分の興味ある分野の話が多かったし、本来の目的である ITSM に関する情報収集でも一定の成果はあったと思うので、参加してよかった。また来年も機会があれば参加したいなぁ。

ところで、今回のitSMFコンファレンスの会場は目黒雅叙園。正直、IT のイベントをするには場違いな感じは否めなかった。。。あと、雅叙園に行くには目黒駅からとても急な坂を下りなければならず、逆に帰るときは非常に急な上り坂となる。初日の帰りに坂を一生懸命登ったら、翌日大臀筋が筋肉痛になってしまい、ちょっとショックだった。。。

練習 2009/8/1

@さがみはらグリーンプール

fr 800x1
fr 200x4 3'15"
im 200x1 (3'20")
ba 100x4 1'50"
fr 50x1 dash
down 50

total 2200

久しぶりにの2000超え。相模原だと東京体育館と比べて200で2〜3遅くなるのに加えて、大会前でめちゃ水温が低かったが、今日はそれでもちゃんと3'15"で回れたし、調子自体はよくなりつつある感じ。

しかしそれにしても水が冷たかった。同じ大会でもマスターズになると参加者の年齢層を考慮してか若干ぬるめ (29℃ぐらい) に設定されてるので、今日みたいな冷たさはちょっと辛い。。。まあ泳いでいるうちに体も温まってくるけど、今のなまった体ではとても春先の屋外プールなんて入れないよなぁ、、、。

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