東野圭吾: 黒笑小説



東野圭吾の短編集。

全部で13編収録されているが、どれもブラックでシニカルで、それでいてユーモラス。東野圭吾というとミステリーのイメージがあるが、コメディを書いてもこれだけ面白いというのはさすが。

最初の4編は連作になっていて、売れない俗物作家、その面倒を見る出版社の俗物編集員、そして新人賞を取ったぐらいで勘違いしちゃっている新人作家の織りなすいけてないっぷりはかなり面白い。他にも「モテモテスプレー」のかわいそうな主人公とか、シンデレラの主人公を白夜行の雪穂ばりの悪女に仕立てた「シンデレラ白夜行」(タイトルが絶妙) とか、どれも大変面白かった。

少々下ネタに走っていたり、女性が読むと不快に思うんじゃないかと思えるような箇所もあったりするが、全体的にはとてもよくできた作品だと思う。

実はシリーズものの第3作らしいので、前作も是非読んでみたい。

宮部みゆき: 地下街の雨



久しぶりに宮部みゆきを読んだ。

この作品は、10年ほど前に出された短編集。ちょうど理由を書く前ぐらいの作品になるのかな? 7編の作品が収録されていて、扱っている題材も話の展開もそれぞればらばらなんだけど、どれもちょっとずつ宮部らしいさが出ているし、多様な宮部作品の "幅" がぎゅっと小さく凝縮された作品でもあると言えるだろう。ミステリーもファンタジーも、はたまたささやかな日常を描いたような作品も、何でもこなしてしまう宮部のすごさを改めて再認識した。

軽い感じなので、疲れているときでも割と楽しく読めるのではないだろうか。

綾辻行人: 水車館の殺人 <新装改訂版>



綾辻行人の2作目。こちらも新装改訂版として出たので読んでみた。

前作「十角館」は「そして誰もいなくなった」へのオマージュであり、そして種明かしをされるまで誰が犯人なのか全く分からない奇抜な展開が特徴であったが、こちらは謎解きが徐々に進んでいくという感じで、より推理小説らしい推理小説であると言えるだろう。ただ、後付の解説で有栖川有栖氏も書いているが、謎が解けていく過程を読者が一緒になって楽しむことが出来る、つまり容易な謎と難解な謎がほどよい割合で混ぜられているところが、より読者を引きつけるんだろう。マスク+焼かれた死体というところでまず入れ替わりが容易に想像できるし、その意味で犯人の類推もそれ程難しくはない。ただ、現在の中で過去を時系列順に振り返るという手法もあって、種明かしまでゆっくり楽しむことが出来るというのがプラスに作用していると思う。

いくらマスクをしているといっても、声とか仕草とか、そんなに簡単にだませないだろうという気はしないでもないが、その辺のリアリティから脱却してよりエンターテインメントとしての推理小説を目指したのが新本格というジャンルだと考えれば、まあこれは許容範囲かな。

とにかく展開がいいし、読みやすい文体は相変わらずなので、こちらも「十角館」に負けず劣らずおすすめかも。

# 次は「時計館」かな。新装改訂版で出るのかな、、、?

山田詠美: 風味絶佳



山田詠美の短編小説集。

タイトルにもなっている「風味絶佳」は、柳楽優弥&沢尻エリカの映画「シュガー&スパイス」の原作にもなっているし、前からちょっと気にはなっていたのだが、やっと文庫版が出たので手にしてみた。

筆者曰く「職人さんを書いてみたかった」ということで、主人公はどれも特殊な職業についている。ゴミ収集員、ガソリンスタンド店員、下水清掃員、火葬場職員、等々。彼らが織りなす様々な形の恋愛がこの作品のテーマ。

ただ、それぞれの恋愛事情は様々。その中で自分がいちばんいいと思ったのは、暗い過去を持つ妻との甘い恋愛を書いた「アトリエ」かな。最後はかなりショッキングだったけど、いろいろ考えさせられる。中年の男女が初恋をやり直す「海の庭」もほのぼのしていてよかった。「風味絶佳」もまあまあよかったが、押したり引いたり出来ない志郎のもどかしい姿とか、あっさり元さやに戻っちゃう乃里子の姿とか、ちょっと若すぎるよなぁというあたりであんまり共感が出来なかった。最後の「春眠」は、自分には全然分からない世界だな。。。章造の憤りは自分にもよく分かるし、正直このオヤジを見ていると気持ち悪い以外の何者でもない感じ。これが分からないというのは、自分もまだまだ修行が足りないんだろうか、、、。

山田詠美の作品を読むのはこれが初めてだったが、文章はとても読みやすいし、表現もとても自然。あんまりベタベタした恋愛小説が好きではないのでこれまで避けてきたけど、さすがに売れているだけのことはあるなぁ、と思った。

村中剛志: 「先読み力」で人を動かす



「先読み力って何だろう?」と思って読んでみた。

副題が「リーダーのためのプロアクティブ・マネジメント」となっていて、内容はマネジメントとしてチームをプロアクティブなマインドで引っ張って行くにはどうしたらいいか、というもの。期待していたものとはちょっと違ったし、今の自分にとってすぐに有効という部分はそれ程多くなかったけど、それでも参考になる部分はあった。

- スケジュール管理・タスク管理

ここは正直自分の苦手とする分野。とりあえず仕事はこなせているけど、ちゃんと計画だてて行うことが出来ない性分は何とかした方がいいなあと思いつつも、全然出来ていない。この本で村中さんが紹介している手法は、まず予定をちゃんとたて、その上でその予定がちゃんと守られているのかをレビューし、守られなかったものは何故出来なかったのか理由まで考えましょうというもので、これは自分もまねしないとな、と思った。

- ミーティングの準備

ミーティングは参加者全員の時間を奪う行為でもあるので、生産性の高いミーティングにすべきである。そのためには事前の準備が最も重要だと筆者は主張している。これは、この前受けた「Facilitation Skill」のトレーニングでも言われたことで、なかなか実践できていない部分でもある。もうちょっと真剣にやらんとな。

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