コーディ・マクファディン: 傷痕 (長嶋水際・訳)



普段あまり洋物は読まないんだけど、薦められたので借りて読んでみた。

舞台はアメリカ西海岸。主人公は FBI でも屈指の女性捜査官・スモーキー。凶悪な殺人犯に夫と娘を殺され、精神的に参っていたスモーキーの元に飛び込んできたのは、かつての親友が虐殺されたという知らせ。葛藤しつつも現場に復帰したスモーキーには犯人からの挑戦状が残されており、やがてこの凶悪な猟奇的殺人犯を追いつめていくというストーリー。

作者が「羊たちの沈黙」に insire されて筆を執ったというように、事件の凄惨さとか犯人の「正気な狂気」はハンニバル・レクターにも通じるところがある。ただ、この作品は犯人の異常さではなくて、FBI の捜査の手法であったり、チームワークであったり、家族の大切さであったりと、凶悪でない部分にフォーカスが当たっており、「羊たちの沈黙」シリーズや「SAW」のような後味の悪さはあまりない。最後もまあこれしかないというような結末だったし、その意味ではすっきりしたかも。

スモーキーの超人的すぎる能力とか、犯人の見せる詰めの大甘なところとかはちょっと微妙ではあるが、ラスト150ページのハラハラ感はかなり読み応えがある。

上下巻に分かれていてちょっと長めの作品ではあるが、比較的楽に読めたかな。

コリン・ジョイス: 「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート



日本に住んで十数年という筆者が、母国イギリスの人に説明するという設定で日本について解説した本。

日本が外国からどう見られているのか、どう報道されているのか、そして実際日本に住んでみるとどんなことを感じるのか、といったあたりを知ることが出来る。

筆者は日本がとても好きで、日本の伝統的な文化、日本の食事、日本の生活習慣にかなり感銘を覚えているようだ。こういうのを読むと、日本もまんざら捨てたもんじゃないなという気にさせてくれる。

取り立てて衝撃的なところもなければがっかりすることもなく、あまりインパクトのある作品であったとは言い難いけど、ま、でもおもしろおかしく誇張されていない分、外国人から見た巣の日本観というのがうまく表現されているとは思う。

# なので「抱腹レポート」はちょっと煽りすぎかも。。。

恩田陸: 夏の名残りの薔薇



久しぶりの恩田陸。

舞台は山奥の古風なホテル。年老いた三姉妹がこのホテルに親族・仕事上の関係者を招待して開かれる年に1度のイベント。金持ちの道楽にも見えるこの変わったイベントの裏には、実は三姉妹の悲しい過去や参加者同士のどろどろした人間関係があり、そしてやがてそれを利用するかのように悲惨な事件が起こる。

正直、かなり難しい作品。途中途中でト書きのような文章が割り込んで来るのだが、物語との関連性がつかめるまでは全く意味が分からない。最初の方は無理矢理関連性を見いだそうとして読んでいたのでかなり疲れてしまい、なかなか読み進めることが出来なかった。また、基本的には時系列で章立てされているのだけど、前の章で起こったことが次の章ではなかったことになっていたりして、かなりいろんな可能性を考えながら読まなければならない。

それでも、最後の方まで行ってこのト書き部分 (「去年マリエンバードで」という映画の原作らしい) と本文との関連性が見えてきたり、何で起こったことが起こってないように書かれているのかが分かってくると、なるほどなぁ、と驚嘆せざるを得ない気分になる。かなり実験的な作品であることは事実だが、ただの実験で終わらず、ちゃんと物語として成り立っているというのは恩田陸の何ともすごいところ。

ただ、正直ちょっと結末にはがっかりだよなぁ、、、。「去年マリエンバードで」の部分を読む限り、X のイメージとはほど遠いし、瑞穂が6人を集めた意図が全く書かれていない上に X の行動との関連性も全くない。結末は無理矢理「去年…」に合わせたような気がしないでもない。

普通の作品に飽きたらず、ちょっと変わった作品を読みたいと思う人にはお勧めしたいけど、それ以外の人にはあまり勧められないかも。

勝間和代: 勝間和代の インディペンデントな生き方 実践ガイド



最近著作が何かと話題の勝間さんがはじめて世に出した本。勝間さんがどんな人なのかということにも興味があったので読んでみた。

基本的には女性向けの啓蒙書で、自立した女性になるにはどうしたらいいのか、という内容の入門レベルの本。公認会計士に19歳で合格したという経歴はものすごいけど、実際彼女もいろんな壁にぶち当たりながら成長していたようで、そこで学んだことをまとめた本という位置づけになるのかな。

よくビジネスマン向けの本で「ポジティブシンキングしなさい」とか「時間を見つけて勉強しなさい」といった類の本が売られているけど、この本はターゲットが女性であることも意識されているようで、とても柔らかい書き方と、ところどころに散りばめられた女性が興味を持ちそうなトピックが印象的だった。

こうした考え方はこれからの社会で生き残っていくためには必要不可欠だと思うし、ぜひ多くの女性に読んで欲しいと思う。

おおむね同意できるし、男性の自分でも実践してみようかという気にはなるけど、あえてだめ出しをするとすれば、

- 離婚と転職を同レベルで議論しているけど、これはちょっと違うかな。一番大きな違いは子供の存在。

- 年収1000万以上の男性を探せって言っても、とっくに適齢期を過ぎている&既婚の男性ばかりがターゲットになってしまう気が。。。まあ、将来的に1000万円稼げるような男を、ってことなのだろうけど、、、。

瀬尾まいこ: 天国はまだ遠く



瀬尾まいこの作品は「幸福な食卓」「卵の緒」に続いて3作目。ヘビーな展開ながらもどこかほのぼのとした描写はこの作品でも共通。まさに瀬尾ワールド全開という感じ。

田村さんみたいな人は現実にはそうそういないよなぁ、と思いつつも、主人公である千鶴が徐々に立ち直っていく姿を見ていると、自分も頑張らないとという気持ちにさせてくれる。仕事がうまくいかないとか、人間関係がうまくいかないとか、人生にはそうした悩みはつきものだけど、どうしてもダメなら仕事も辞めて新しい世界でリセットしてやり直せばいいじゃん、ぐらいの気持ちでいた方が楽しく暮らせるよね、ということなんだろう。

だいぶ瀬尾まいこにはまりつつあります。

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