
久しぶりの恩田陸。
舞台は山奥の古風なホテル。年老いた三姉妹がこのホテルに親族・仕事上の関係者を招待して開かれる年に1度のイベント。金持ちの道楽にも見えるこの変わったイベントの裏には、実は三姉妹の悲しい過去や参加者同士のどろどろした人間関係があり、そしてやがてそれを利用するかのように悲惨な事件が起こる。
正直、かなり難しい作品。途中途中でト書きのような文章が割り込んで来るのだが、物語との関連性がつかめるまでは全く意味が分からない。最初の方は無理矢理関連性を見いだそうとして読んでいたのでかなり疲れてしまい、なかなか読み進めることが出来なかった。また、基本的には時系列で章立てされているのだけど、前の章で起こったことが次の章ではなかったことになっていたりして、かなりいろんな可能性を考えながら読まなければならない。
それでも、最後の方まで行ってこのト書き部分 (「去年マリエンバードで」という映画の原作らしい) と本文との関連性が見えてきたり、何で起こったことが起こってないように書かれているのかが分かってくると、なるほどなぁ、と驚嘆せざるを得ない気分になる。かなり実験的な作品であることは事実だが、ただの実験で終わらず、ちゃんと物語として成り立っているというのは恩田陸の何ともすごいところ。
ただ、正直ちょっと結末にはがっかりだよなぁ、、、。「去年マリエンバードで」の部分を読む限り、X のイメージとはほど遠いし、瑞穂が6人を集めた意図が全く書かれていない上に X の行動との関連性も全くない。結末は無理矢理「去年…」に合わせたような気がしないでもない。
普通の作品に飽きたらず、ちょっと変わった作品を読みたいと思う人にはお勧めしたいけど、それ以外の人にはあまり勧められないかも。