John D. Barrow: 数学でわかる100のこと



イギリスの物理学者である Barrow 氏が、普段の身の回りの事象を数学的にとらえるとどうなるかというテーマで書いた短いエッセイを100本集めた本。

日常生活で起こりえるちょっとしたことを数学的に考えるというのは、根っからの理系人間である自分にとってはどちらかというと当たり前にやっていることではあるけれど、おそらく世の中の大多数のみなさんからすれば奇異の目で捕らえられていることだろう。確かにいちいち数字でものを考えて、どうすれば最適化できるかとか考えながら生活するのはある意味で窮屈ではあるが、しかしこういう考え方をすることで論理的思考力を養うこともできるし、結果的に損をしない decision を下すのにも役立つだろう。最近よく言われているフェルミ推定ができるかというのも、日頃いかにこうした思考をしているかという点が重要になっている気もする。そうした思考パターンをちょっと垣間見てみたいという人には、この本は大変参考になるだろうと思われる。

たとえばこの本の副題にもなっている「いつも隣の列のほうが早く進むわけ」なんていうのは、おそらくほとんどの人が体感的に感じていることだろうけど、ちょっと数学的に (というか算数レベルだけど) 考えるとそのからくりが何となく分かってくるし、ちょっとだけもやもやが解消される。

この本で書かれている話は、著者の Barrow 氏の主張が本当に正しいのかをきちんと考えながら読まないと面白みがないわけで、読み切るのに偉い時間がかかってしまった。途中ちょっと飽きてきてつらいところもあったけど、読み終えた感想としてはなかなか面白かった。

絲山秋子: 絲的メイソウ



久々の書評。

実はずっと読んでいる本があるのだが、これが考えながら読まないと全く意味のない種類の本で、通勤の電車の中だけではちっとも進まないので若干やる気をなくしていた。ということで、ちょっとしたリハビリもかねて軽いエッセイでも読みたいなぁと思っていたところ、最近ちょっといいなと思っていた絲山秋子のエッセイがあったので、手に取ってみた。

絲山秋子の作品というと、やはり初めて読んだ「袋小路の男」のイメージが強烈で、恋愛小説なんだけどなんかとてもやるせない感じの作品を書く人というイメージがあったが、このエッセイではそうした雰囲気の作品を書くに至った作者のキャラクターが全開。ちょっとひねくれすぎている感じは否めないが、シニカルなネタでもかなりテンション高く明るく書いているので、シリアスなのにどこかのほほんとしている。こうしたひねた感じをある意味自分でも受け入れて、それを開き直ってぶちまけまくっているからこうした明るさが出るんだろう。

とはいえ、他人の価値観を受け入れないような器の狭いところもあって、若干ムカムカするのもまた事実。まあ、みんながみんな善意で動いているわけではなく、きれい事や性善説だけでは世界は動いていないんだと言うことを意識する上では有意義だったけど、、、。

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