
精神科医でTVのコメンテーターなどでもおなじみの香山リカさんの本。かなり売れているらしい。
精神科の臨床に身を置く香山さんがここ10年ぐらいで感じているのが、一見普通に幸せに見えるにも関わらず自分が幸せでないことに悩んでいる人が多いということ。そうした患者さんの1つの傾向として、がむしゃらに頑張らないと幸せを手に入れることができないんだという強迫観念にとらわれすぎて頑張りすぎてしまうことがあるとしている。さらに頑張った結果成功を収めた人を周囲が賞賛しすぎるあまり、成功できない自分にまるで生きる価値がないかのような錯覚を覚えてしまうような風潮があるということも問題であると筆者は述べている。その典型例として、香山さんは最近の「勝間和代ブーム」に警鐘を鳴らしている。みんながみんな勝間さんのような生き方をしなければならないというわけでもないし、そんな能力のある人なんてごく一部であるというのに、勝間さんの考え方をまねしないと成功できないんだと思い込んではいけない、というのが香山さんの主張らしい。
過ぎたるはなお及ばざるがごとしという言葉があるように、何でもいきすぎというのはよろしくない。この本に書かれているような、たとえば恋愛に依存しすぎたりだとか、きらびやかな成功を追い求めすぎないとか、そういうことは世知辛い世の中を生き抜いていく上では必要な考え方だろうと思う。
もっとも、全く頑張らなければ何も改善されない。ちょっと頑張るけど自分の身の丈以上には頑張らない、そしてそういうありのままの自分を受け入れることができる人間というのが、結局は幸せな人生を送れるのではないだろうか。たとえ社会的に大成功を収めてなかったとしても。
精神科医としての立場で書かれているだけに、ちょっと偏った見方をしている部分もあるとは思うけど、ふと息を抜いて読むにはちょうどいい本だと思う。