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角田光代: 中庭の出来事



角田光代さんの長編サスペンス。

ホテルの中庭で行われたパーティーで、舞台作家が何者かによって毒殺される。確固たる証拠が見つからず、結局自殺であったのではないかと推測されるものの、とある女優が実は殺人事件であったと推測し、犯人と思われる相手を同じホテルの中庭で問いつめる。

という内容のお芝居をしている女優さんたちのお話。このお芝居を書いた作家とその相談相手とのやりとりや、舞台の脚本、さらにはそれを演じている女優と刑事の会話が交互に現れるといった形態で、一見複雑でどのレベルの話なのかが分かりづらいが、その関連性が徐々に見えてくるにつけ、より話が深くなっていく。

恩田さんはこういうかわった形態の話をよく書くけど、今回の作品は今まででも一番変わっていると思う。舞台を演じるには自分を話の世界にとけ込ませることも必要で、そうすると虚構と現実の区別が見えにくくなるだろう。が、実は人間誰しも自分というキャラクターを演じざるを得ないときもある訳で、人間が生きている世界fではどれが虚構でどれが現実かという区別は実はかなり曖昧である、という恩田さんならではのメッセージが込められているような気がした。

殺人事件自体には大したトリックもなければ大どんでん返しがある訳でもないけど、最終的にこのお話が迎える結末をみると、そうだったのかぁ、と納得できると思う。

3つの世界を行き来しながら話が進むので、どの世界の話なのかを理解しながら読み進めなければならず、その意味でかなり読むのにエネルギーを要する作品ではあったが、これはこれでなかなか面白かった。

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