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中山マコト: お客様は神様か?



副題は「売れない時代の新しい接客・サービス」となっていて、今の時代にものを売るにはどういう接客をすればいいのか、という点について議論した本。

「お客様は神様です」という姿勢は、戦後日本の成長とともに日本国民の中に浸透してきたものである。かつて客が店を選ぶことが出来なかった時代というのは、客が店に足を運ぶのはあくまで「購買」が目的であった訳で、「客が来る」=「お金が入る」という構図が成り立った時代ではお客様は神様だっただろう。が、逆に店側が顧客に選ばれるような時代にあって、こうした高度成長期の考え方を引きずって踏襲しても売り上げにはつながらないだろうというのは自分も同意するところ。

ただ、正直この考え方と、この本で挙げている例とが全然リンクしていないように見えたのはかなり残念だった。

筆者は「お客様は神様である」という姿勢を捨てろといいながら、これからの時代に求められているやり方として説明しているのは、(小手先のテクニックに関する部分を別にすれば) 客をさらに上のレイヤに押し上げるような接客態度のように思う。

それと、経営者はもっと現場のことを知るべきだといいながら、著者自身が庶民の生活とか庶民向けの店の仕組みについて全く理解していないというのも何とも読んでいて歯がゆいところだった。大衆向けの安居酒屋チェーンと、至れり尽くせりのサービスを期待する高級料亭では、顧客の期待度も違うというのに、チェーン居酒屋で料亭のサービスをしろというのは無理な気がする。

とはいえ、じゃあ安ければサービスはおざなりでいいのかというとそういうわけでもないだろうし、とにかく安さばかりに目がいってしまうというのは必ずしもいい傾向ではないように思う。今の世相がそういう方向へ後押ししているのは間違いないが、何となく自己破滅に向かっているような気がしてならないのは自分だけだろうか。

… だいぶ脱線してしまったけど、サービス業に携わるものとしては肝に銘じておくべきポイントもいくつかあるので、決して無駄ではないと思う。

もうちょっとサービス業に関する本もたくさん読みたいところ。

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