
昨年目標に掲げた「古典を読む」の一環としてはちょっと時代が新しすぎる感もあるが、以前から村上春樹の新訳には興味があったので、読んでみた。
「ティファニーで朝食を」というと、小説よりもオードリー・ヘップバーンの映画の方が有名だろうと思うが、何を隠そう、自分はこの映画を全く見たことがない。そんな前提知識ゼロの状態で読んだわけだが、結論から言うとまっさらな状態で読んで良かったと思う。
話はご存じの方も多いと思うが簡単に要約を。第2次世界大戦中のニューヨークを舞台とし、作家志望の若者がほのかに思いを寄せる女優の卵である女性との日々について書きつづったというストーリー。主人公はどこか田舎臭さを残すような青年ではあるが、そんな彼が可憐ではあるが自由奔放な彼女に振り回されつつも、最後に訪れる悲しい結末が何とも胸を打つ。いかにもアメリカの恋愛小説という感じではあるけど、なかなか面白かった。
ちなみに、村上春樹が後書きで書いているように、原作だけ読んでホリーの役としてオードリー・ヘップバーンを思い浮かべる人は非常に少ないだろう。「僕」役のジョージ・ペパードという人は自分は残念ながら存じ上げない (そもそも洋画の俳優さんをほとんど知らないというのもあるが) のだけど、ググって写真を見る限りはやはり男前で、「僕」の持つ繊細さや田舎っぽさは全く感じられない。小説と映画は全く別物であると考えるべきだろうけど、それにしてももうちょっと良い配役があったのではないかとも思ってしまう。
本書には表題の話以外にも3点の短編が収録されている。どれも60年ほど前の若者の淡い恋の話になっていて、その当時の時代背景なども読み取ることが出来てとても興味深かった。