
直木賞作家、三浦しをんさんの連作長編小説。
この本の主人公は大学教授の村川融だが、本人は一切出てこない。村川の弟子、妻、愛人、愛人の夫、愛人の娘、息子と、村川を取り巻く人間の視点から村川の人となりが描かれている。
率直に言って、村川は研究者としては有能かも知れないが人間としてはダメ人間。その純粋だが幼稚すぎる考え方が周りの人をどれだけ傷つけているのか全く理解できていないし、そのくせ自分の本能や直感には決して逆らわないというのは、ある意味ではうらやましいが、こうなってはいけないという見本でもあるように思う。
でも、一番の被害者は「水葬」の村川綾子だろう。もしかしたらこの物語で人として一番最低なのは、綾子の母親・太田晴美かも知れない。綾子もしかり、最後の話もしかり、とにかく疑心暗鬼にとらわれている姿はあまりも自分勝手で腹が立つ。
ま、しかし村川みたいな人、普通の人間の枠にはめちゃいけないんだろうなー。こういう浮世離れした人ってたまーにいるけど、下手に関わると (特に男女の関係として) 偉い目に遭うという感じかな。
なかなか面白かった。