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金原ひとみ「AMEBIC」



20歳にして芥川賞を受賞した金原ひとみの3作目の作品。

いきなり3ページにもわたる意味不明な文章から始まるこの作品。主人公の女性は物書きなのだけど、精神的に不安定で、数ヶ月前から錯乱して無意識のうちに訳の分からない文章を書き殴る性癖を持っている。おそらく大事に育てられた反動なんだろう、多様な価値観を受け入れることが出来ないという性格から、自分だけにしか分からない美意識に心酔し、周りを卑下しつつ自分の殻に閉じこもっている主人公。

自分でも何かが欠けていることを心の奥底では理解しながら、それを受け入れられず、結果「錯乱」という逃避行動に走る姿はとても痛々しいし、嫌悪感すら感じる。ただ、若い頃って人と違うことに悩み、異質な他人を受け入れられないことは往々にしてあるし、それが過剰に出てしまっただけなんじゃないかと思うと少しだけ同情できる。

それと、この作品には主人公の書いた「錯文」がいくつも出てくる。正直読み解くのにかなりのパワーを要するし、意味が全く分からないものもある。ただ、そんな中でも、タイトルになっている「AMEBIC」と呼ばれる錯文の世界は何とも不思議で深い。ちょっと内容がエロすぎるけど、これだけでも相当強烈な世界観を表現していると思う。

比較的短い作品ではあるが、かなり重たい。精神的に余裕があるときに読むことをおすすめします。。。

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