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宮部みゆき「本所深川ふしぎ草紙」



久々の宮部。

時代物というジャンルがどうにも好きになれず、好きな宮部みゆき作品の中でもこのジャンルの本はこれまで1冊も読んでいなかった。が、食わず嫌いも良くないだろうと思い、まずは評価の高いこの本にチャレンジ。

とても面白かった。

本所深川の伝わる七不思議を1つずつ織り込んだ短篇7作の構成。どれもが宮部らしい人情味溢れる話になっている。ミステリーの要素も入っているが軽めなので、とても読みやすい。

題材が七不思議から来ていることもあり、このネタで時代小説になるのはとても自然だったし、時代物だからこそ高度なトリックも必要なく話が進むという点もあったと思う。

自分が時代物が好きでない理由の一つに、結局時代物というのはすべてが虚構の世界であるという点がある。現代人が当時の世相を理解して話を組み立てるのは不可能なはずで、恋愛観、仕事観、人生観、宗教観、すべて現代人と違うはずなのに、何故かストーリーは現代人の感覚で書かれたりしていて、そのギャップに耐えられないというのがその理由。

ただ、この作品にしても、以前読んだ「巷説百物語」にしても、そのギャップを埋めてもなお有り余るほどの中身を提供してくれたと思うし、とても自然だった。世の中には無理な設定の小説はたくさんあるわけだし、所詮小説というのはフィクションの上に成り立つモノではあるので、その意味で、無理ない設定になっていれば現代物だろうが時代物だろうが関係ないと言うことか。

まあ少なくともこの本はとてもいい本だったので、宮部の時代物にももうちょっと積極的に手を伸ばしてみようかな。

コメント
宮部みゆきって面白いってみんな言うんだよね。私一冊も読んだことないの。こんど貸してプリーズ!
  • リコ
  • 2006/08/07 5:58 AM
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