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村上春樹「やがて哀しき外国語」



村上春樹が90年代前半にプリンストン大学に客員研究員として在籍していた頃に書いていた十数点のエッセイをまとめたもの。

日本人として、そして大学の職員として、アメリカに暮らす日常について綴りながら、作者のアメリカ観、日本観を存分に語ってくれている。それに加えて村上さんが作家になるに至った経緯とか、村上さんの日常の思考回路なんかがにじみ出ている感じでとても面白かった。

自分が興味を持った点としては、

- アメリカ人は物事を型にはめて理解したがる
- 男女差別については厳しいが、人種、生い立ち、職業に関する差別は (日本人的感覚からすると) 露骨
- 「自分が一度何か圧倒的な経験をしてしまうと、それが圧倒的であればあるほど、それを具体的に文章化する過程において人は何か激しい無力感のようなものにからめとられてしまうのではないだろうか。」という一文
- 「日本語は美しい」というのは贔屓目で、本来どんな言語も対等

といったあたりかな。

10点満点で8.5点。


ところで、以前からここでも書いているように、自分はエッセイというジャンルの読み物がとても好きだ。

エッセイというのは、その人の「人となり」が如実に表れる分、小説よりも人間味やリアリティがあるし、また一方で論説文よりもくだけた文章で書かれていることが多いのでとても読みやすい。特に村上春樹のような素晴らしい感性を表現できる作家の書いたエッセイというのは、文章そのものも魅力的なので殊更面白く感じる。

自分に文才があったならば、ぜひ魅力的なエッセイが書ける作家になりたいなぁと思う。

とはいっても、無いものをねだっても仕方ないので、せめて読者としていい作品にたくさん出会えればいいなぁというのがその次の願いかな。

コメント
村上春樹いいよね。
オレも好き。
かなりの高得点らしいので読んでみます。
  • びぃ。
  • 2006/07/09 12:40 AM
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