
タイトルだけ見ると、確率論を駆使した数学的に難解な内容のようにも読めるけど、どちらかというとビジネス書に近い。
世の中のすべての現象には不確実性が伴う。たとえば明日の天気が晴れなのか雨なのかと言うことにしても100%当てることは不可能であり、人間はこのような不確実な世界の中で決断を下しながら生きていく必要がある。こうした中で我々はつい結果論で物事を考えてしまいがちで、いい結果が出ればやり方もよかったのだろうと勘違いしがちであるが、結果というのは偶然に左右されるものであり、その原則を忘れると手痛い失敗をしかねないという警鐘を鳴らしている。
そうした不確実性を定量的に扱ったのが確率論であり、たとえば大数の法則や中心極限定理に代表される数学的に重要な性質を理解することは、不確実な世の中で間違った決断を下さないためには重要なことである。自分は大学で確率モデリングを専攻していたこともあって、こうした考え方や背景にある数学的理論には親近感も感じるところではあるが、そうした難しい話は抜きにしても、そこから得られる結果だけを知っておくだけでも人生にとって大いに役立つだろう。
この本では、歴史上の事例やビジネスの世界における事例なども豊富に取り上げながら、不確実性をうまく扱うことこそが成功への近道であるという主張を繰り広げている。重要なのは、
- 歴史的に成功を収めているのは、ばくち打ちのような判断の仕方ではなく、失敗する可能性を最大限排除するという判断の仕方ができる人間である。
- いくら準備をしても不確実性をゼロにすることはできない。不測の事態に備えて、常に多様性を用意しておくべきである。
といったところだろうか。これはビジネスを進める上でも、また個人として生きる上でも忘れてはならない原理原則の1つだろう。
ともすると人は派手な成功に目を奪われがちで、そのようなぱっと見「勝ち組」と見える人のやり方を模倣しがちではあるが、それが必ずしもいいやり方という訳ではないだろうし、模倣するにしても自分が本当に求めるものが何かを見極めてあげなければならないだろう。
数学的な難しい話がほとんど出てこないのにも関わらずこれだけわかりやすく書かれているというのは、筆者が数学の専門家ではなく、銀行で実務を担当していた中で触れた知識に基づいて話をしているからだろう。筆者の知識の量にも圧倒されるし、理系文系問わず読んで損はない本だと思う。
# 途中で数字の計算が間違っていたりするのはご愛敬かな。