
Jasmine さんに借りて読んだ本。
おおまかにいうと少年犯罪を扱ったミステリー小説、という感じかな。とある中学校に勤務している女性教諭の娘が教え子に殺害されるという悲惨な事件と、事件の背景、さらに事件後に闇を抱えた関係者の結末などがリアルに描かれている。基本的には、タイトルにもあるように、事件の関係者が自分の思いを1人称で告白するという形でストーリーが展開していく。これを6章に渡って続けていくことで、事件をいろいろな当事者の目から説明して全貌を描きつつ、事件前・事件・事件後という時間軸をきれいに整理して書いているのはさすがという感じ。一度章を読み出すと、結局この告白の結末がどこにあるのかと気になってしまう。話の展開もうまいし、この手の事件で想像しがちなドロドロ感を過不足なく表現している気がして、頭にすーっと入っていく感じだった。
最初の章を見る限りは少年法に関するアンチテーゼというような論調なのかと思ったけど、氏の論調はそのレベルを超越していて、たとえば人が人を私的に裁くことの是非とか、自身の心の黒い部分といかに折り合いをつけてうまく生きていくかとか、また行き過ぎた偏愛に対する警鐘とか、現代社会に巣食う闇を一気に表現しており、非常に考えさせられる作品であると言える。
結末がちょっとあっけな過ぎるかなという気もするし、森口先生だけがちょっと飛び過ぎちゃっている気もしないでもないが、全体を通して振り返るとかなり面白かった。これがデビュー作とはとても思えない。
小さい子供を持つ親はちょっと読むのがつらいかも知れないし、どろどろした暗い話なので精神的に余裕があるときに読むことをおすすめします。。。