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三浦しをん: 風が強く吹いている



東京郊外の大学近くにあるボロアパート竹青荘。ここの生活を取り仕切っている主人公の清瀬が、アパートの住人と駅伝チームを作り、箱根駅伝を目指すというスポ根ストーリー。

そもそも設定があり得ないのだが、それを感じさせないほど爽快で感動的な話に仕上がっている。我々が正月に箱根駅伝を見て学生たちの真摯な姿に心を打たれ、そして実況で彼らの裏側にあるストーリーを聞いて感動を受けるというスポーツ観戦の楽しみを小説の中で見事に再現している。本当の箱根駅伝はそんなに甘いものというのは百も承知だが、そもそもスポーツもののフィクションでは多かれ少なかれ設定に頼っている部分もあるだろうし、こうしたありえなさを逆手にとってコミカルさを演出しているのもなかなかよいと思う。

走る姿とか練習風景でなく、走っている間の選手の感情を中心に描かれているため、よけいに感情移入しやすい。マラソンをやっている人にはこのありえなさが受け入れられない可能性もあるが、読後感も非常に良いし、エンターテインメントとしては非常に良い出来だと思う。

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