
この本が文庫になって平積みで置かれていた頃に「読んでみたいなぁ」と思っていたものの、その後すっかり忘れていて、先日5年ぶりぐらいに本屋で見かけて購入。
舞台はベトナム。主人公は旅行会社に勤める営業社員。得意先の会社社長から中学生の孫のベトナム一人旅につきあってくれよう依頼された主人公とともに旅行の計画を立てるが、この旅行には実は父親を捜すという重要な目的が隠れていた。少年と主人公、それに主人公の旧友の3人がベトナムに渡り、危険を伴いながらも父親を捜していくというストーリー。
2部構成になっているが、特に前半は秀逸。少年の家のドロドロとしているところとか、何故少年がベトナムに行かなければならないかとか、読者の興味をかき立てるような筆致で描かれている。それと後半も、ベトナムの街中の様子がいきいきと描かれていてとてもよい。自分はベトナムに入ったことがないけど、それでもベトナムの街並みが頭の中に浮かぶような、雰囲気のある描写がなされている。ハラハラドキドキさせる展開もいいし、これがデビュー作とは思えないほど非常にしっかりした作品であるといえる。
欲を言えば、結末にもうちょっとパンチが欲しかったかな。何というか、悪役がちっとも悪役じゃない印象を受けた。こんなにうまく行くかいなというところも結構多かった。
まあでもハードボイルドが好きな人にはおすすめ。