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小幡績: すべての経済はバブルに通じる



昨今の金融危機を象徴するようなタイトルの本が本屋に並んでいたので読んでみた。

この本はサブプライム問題に端を発するここ1年強の金融不安について、実例を挙げて解説したもの。サブプライムローンとは何かと言うところから、何故投資家はバブルと分かってサブプライムに投資しなければならなかったのか、そしてこれまでのバブルと今回のバブルとの違いについて説明し、21世紀型の新しいバブルの形態は今後も現れ続けるだろうと結論づけている。

この新しい形態のバブルを筆者は「リスクテイクバブル」という言葉で定義している。本来リスクがあるべき金融商品を変形させて新たな魅力的な商品が作られることで、もとの商品をリスクなく証券化できるという構造ができあがり、リスクが相対的に目減りしているように見えることで同時に価値が上がっているかのように見えるのは、土地転がしの「土地」を「リスク」そのものに変えただけであり、その意味でリスク自身を担保としたバブルが起こっているというのはなるほどと思う。

そもそも経済活動というのは、あるものに価値を負荷する対価として利益を得るのが大前提ではあるが、実体のないものに投資してどうして利益が得られるのかずっと不思議ではあった。株式にしても、いまの金融市場では経営権を得るための存在としての株式ではなく、市場で取引される価格のみに価値を見いだす存在となってしまっている。こうしたお金がお金を生む (無から有が生まれる) という構造自体にはずっと違和感を感じていたし、その意味でやはり実体への回帰は必要だろう。

金融工学に過度に依存し、他を出し抜くがためだけに半ば自滅的にファンドマネージャがバブルへ突っ込んで行かざるを得ない状況を「キャンサー・キャピタリズム」と表現しているように、この状況が正常な状態ではないことは徐々に周知の事実となってきているように思う。では規制を導入すればいいかというと必ずしもそうではないとも思うし、なるようにしかならないのだとは思うが、もはや素人が簡単に投資を出来る時代は終わったのかも知れない。

筆者が最後で予見しているように、すべての膿を出し切らないとこの危機は乗り越えられないかも知れない。そうなったら既存の資本主義は大転換を迫られることになるだろうが、我々資本主義下のしがない一般市民としては大転換は決して好ましいことではないし、何とか既存の枠組みを維持しながら共存していければいいなぁ、と切に願う。

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