
久々に衝撃を受ける作品に出会った。
どうにも今の日本人は自分の頭で考えずに、「会社が悪い」「国が悪い」「社会が悪い」と人のせいにして逃げていることが多いのではないかという気がしていて、そのことが日本を停滞させている最も大きな要因になっているんじゃないかと思うことが多いのだけど、さらに先の未来を考えた場合にそれが余計に顕著になってくるものと危惧している。とはいうものの、具体的にどうなることを危惧しているかと言われるとうまく表現できないもどかしさがあったのだが、この作品で描かれている世界が一つの形であると気づいたときには空恐ろしくなった。
文庫版後書きで作者が「ファシズムとか憲法改正とかがテーマではない」とコメントしているけど、それでも1つの可能性としてこういう世界を描こうという明確な意志があったことは確かだし、逆に反響が大きすぎて敢えて calm down させる意図でこのコメントを書いたような気すらしている。
とにかく、安藤の口癖である「考えろ考えろ」が作者からのメッセージなんだと思うし、自分の頭で考えずに人にどこかに連れて行ってもらえればいいという姿勢では、どこに連れて行かれるか分からないよ、ということなんだろう。
ファシズムの話とかを抜きにして、純粋にファンタジックなフィクションとしてもとても秀逸。
とにかくびっくり。
扱っているテーマがテーマなので好き嫌いはかなり分かれると思うが、絶対に一読する価値はあると思う。
# といいつつ、自分も伊坂幸太郎に流されている気もするなぁ、、、。