
東野圭吾の直木賞受賞作。
ガリレオシリーズ3作目となるが、前作、前々作が短編集だったのに対してこちらは長編。つい勢いで前夫を殺してしまった女性 (靖子) を救おうとする隣人の数学教師の石神。靖子を最重要人物として捜査するも、石神の仕掛ける巧妙なカモフラージュに次第に行き詰まる警察。しかしこの事件に湯川が興味を持ったことから、やがて石神との論理バトルが繰り広げられ、最後には衝撃の結末が、という内容。
石神の仕掛ける内容の多彩さには目を見張るものがある。こうしたをトリックを次々と繰り出していく東野圭吾の発想力は改めてすごいと思う。最後のシーンも印象的だし、石神の純粋な気持ちというのがとてもきれいで美しい。作者が単なる偏愛ではないきれいさを描きたかったというのが伝わってくる、よい作品だった。
個人的に1点だけ残念なのは、物語の前半で根幹をなすトリックにちょっとだけ気づいてしまったこと。なので最後にネタ明かしをされた時に「ああ、やっぱり」と思ってしまったのはちょっと残念。それでも重要な部分 (あんまり書くとネタバレになっちゃうけど "ずらし" に関するところ) は最後の最後まで分からなかったし、こういうやり方もあるのか、と素直に感心した。
相変わらず読みやすいので、3時間ぐらいで読み切ることが出来た。