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桐野夏生「OUT」



桐野夏生の代表作とも言うべき作品。彼女の作品を読むのは初めてだけど、先日とあるプロジェクトで一緒に仕事した通訳さんが「面白い」と言っていたので読んでみた。

舞台は西東京のとある街。ふとしたことから夫を殺してしまった女性。弁当工場で夜勤をする同僚の女性4人が隠蔽のためのとった手段は何と死体の解体。やがて1人のいい加減な対応から事件が発覚するものの、リーダー格である雅子の完璧とも言うべき対応で警察の追っ手からは徐々に逃れていくる。その一方で、やがて違う影が雅子に迫って来て、この影との戦いを強いられることになる、というストーリー。

この物語の主人公はリーダーである雅子。頭脳明晰にして冷静沈着な彼女だが、彼女の抱えている闇と、終盤に見せる追ってくる影とのバトルの描写は何とも読み応えがある。他の3人はそれぞれが弱いところを持っていて、それが人間らしさを醸し出しているのに対し、雅子はこのような冷徹な行動に対しても完璧に対処する。始めはこの完璧さが人間っぽくなくて何とも受け入れがたかったけど、やがて雅子の過去が語られるにつれて雅子を応援したくなってくる。ぼろを出し続ける3人 (というか実質邦子か) の尻ぬぐいをしながらも恐ろしい闇と戦い続ける姿は、何というか感動的ですらある。

まさにサスペンスという感じのハラハラドキドキの展開は読み応えがあるが、ただバラバラ殺人の現場の描写とか、ちょっとグロテスクすぎて読むに耐えない部分があったのもまた事実。心臓が悪い人にはあまりお勧めできないかも知れないけど、この部分を除けばなかなか面白い作品だった。

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