
先日読んで衝撃を受けた「イニシエーション・ラブ」の作者が贈る、SF チックなミステリー。
ある日ある時刻にある場所に現れる「時空の裂け目」みたいなところを通ると、現在の意識を持ちながら約10ヶ月前に戻れてしまうことを発見した風間という男が、この性質を利用して同じ時間を何度も繰り返し体験する「リピート」と呼ばれるツアーに、主人公の毛利を始めとする9人を招待する。やがて本当に10ヶ月前に戻った主人公たちは人生をやり直そうとするが、そこには衝撃の展開が、、、。
前作は驚きは大きかったものの、どちらかというと読者をだますテクニックに長けていたという印象で、あとから思い出してみるとストーリー的にはそんなにインパクトはなかった。が、こちらは衝撃度こそ前作には負けるけど、逆にストーリー性は高いし、それでいて中に潜んでいるトリックもなかなかよい。まさに逆転の発想という感じ。リピートという仕組みをふんだんに利用したトリックには脱帽する。前作のような分かる人にしか分からないような仕掛けではなく、誰が読んでも驚ける仕掛けになっているのもよい。
終わり方にしても、基本的にはバッドエンドなんだけど、悪いなりに無理なく丸く収まった感がるので、読後感は意外とすっきりしている。
人生をやり直せたからと言って、必ずしもいい方向に転ぶという訳ではない。しかもそこにトリックがあったとしたらなおさら。今の人生を、まっとうに悔いなく生きることが重要だ、というメッセージ性もあったような気がする。
最初は前作のことがあっただけに「またいつかだまされるのでは?」と思って読んでしまったが、この作品は余計なことを考えないで読んだ方がいいかも。
前作より驚けるかはともかくとして、出来は全然こちらの方が上かな。