
絵本作家の五味太郎が大人社会の問題点をばっさばっさと切り倒していくエッセイ。
大人と子供が関連する様々なトピックを散文的に取り上げている。漠然と感じる今の社会の停滞感は、ひとえに大人がしっかりしてないからだというのは自分も同じ考えだし、トピックの中には共感できる部分もたくさんあるが、全体としてみるとちょっと極論過ぎてついていけなかった。
子供が自分でやりたいことを見つけ、やりたいことだけをやらせてあげればいい、やりたくないことを無理にやらせる必要はない、というのが五味さんの一貫した主張。これはある意味では理解できるのだけど、自分が一番受け入れられなかったのは、五味さんが完全なる性善説の立場から発言しているところ。世の中には残念ながら悪い人もいっぱいいる。みんながやりたいことしかやらなくなったら社会が立ちゆかなくなってしまうのではないか。そういう点に一切触れず、理想論だけを振りかざしているように見えて仕方なかった。
で、一旦ネガティブな観点で読み出してしまうと、そのほかのトピックなんかもただの屁理屈に見えてしまう。
教育論についてもかなり多くの主張がなされている。五味さんは学校教育を根本から否定しているんだけど、個人的には学校での勉強と自ら興味を持って学ぶことというのはどちらも必要なことだと思っているので、ここも自分としてはちょっと相容れないところかな。
世の中を critique に見たい人には受けるかも知れないけど、ちょっとやりすぎかな、というところか。