
ある状況下において人の心が読めてしまう主人公の柳瀬。そのことにより自分も大変な苦労をしているが、一方でその人でも気づかないような潜在意識に働きかけることにより、人が心に抱えている膿やしこりを取り去ることのできるという素晴らしい能力も同時に備えている。そんな柳瀬が悩みながらも自己と向き合い、少しずつ前進していくというストーリー。
この作品の主題といえばやっぱり「愛」だろう。家族愛、親子愛、兄弟愛、そして恋愛。人に対して愛情を持って接するとはどういうことか。そんなことを考えさせられる作品だった。
それと、ラストの方では、そうして膿を出すことに対する是非というのが問題になってくる。都合の悪いことから逃げるというのは、一見弱くて悪い行動のようにも見えるけど、人が人として生きていくためにはどこかに逃げ口を作っておかないと壊れてしまう訳で、そのバランスがとても難しい。でも大事なのは、仮に逃げ口に走ってしまった場合でも、自分が逃げているという事実を認識しておくことにあるのではないか、とちょっと思ったりした。
全体的に面白かったのだが、個人的に超常現象を用いた作品というのがどうにも好きになれないんだよなぁ。この作品にあたっては「人の心が読める」という部分がないと先に進まないだけに、致し方ないところではあるのだろうけど、都合が悪くなると超能力で乗り越えていると思えなくもないような部分があったので、その点だけがちょっと残念。