
こちらも結構前に読んだ作品。出張に向かう飛行機の中で読破。
強盗殺人事件を起こし、刑務所に入っている兄から届き続ける手紙。「殺人犯の弟」という世間の目から逃れるようにしていて生きている弟。ささやかな幸せをつかむたびに、兄からの手紙によってたびたび破壊されるものの、たった一人の肉親である兄との関係を断ち切れない。やがて愛する人、愛する子供が生まれる中で、勤めている会社の社長の言葉をヒントに、自分の生きるべき道を見つけ出す。
自分には難の非もないのに、兄が殺人犯というだけでレッテルを貼られて、そのたびに人生を狂わされる弟の姿を見てると、とても心が痛む。関わりを持つことで自分に火の粉が降ってくることは避けたいという世間の気持ちも分からないではないが、こういう「社会的無視」状態というのはふとしたはずみで誰もが落ちる可能性がある落とし穴だと思うし、そうなった時に自分に何が出来るだろうと考えると、とても気が重くなる。
重いが、読み応えはある。
「殺人の門」とも似た作品になっているが、殺人の門がバッド・エンドなのに対し、この作品はまあそこそこの終わり方になっているかな。最後に希望を見いだして終わってくれてよかった。