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宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション (下)



やっと上中下の下巻を読み終えた。

下巻でもっとも衝撃を受けたのは、帝銀事件のお話。昭和最大の冤罪として知られるこの事件にいちはやく注目し、元新聞記者ならではの鋭い視点で冤罪であることを論理的に証明していく。昭和後期ならともかく、死刑判決が出て1年というタイミングでこれだけの論説ができるというのはまさに驚き。結局今になっても真実は分からない (これは永遠に分からないだろう) が、松本清張のいうように真犯人がアメリカ軍部内にいるという推定はとても理解できるものだし、またそれを理解できるように説明してくれているというのも松本清張のすごいところ。

すべて読み通した中で感じたのは、松本清張という人の博識さ、分析力、そして明快な説明力。松本清張の作品は基本的には人間の暗部を描いたものが多く、推理ものでも歴史物でも、とにかくどんよりした気持ちになるものが多い。しかしそれ以上に、物事をとても深くまで捉えた、核心を突いた文章が随所に出てくるので、暗い中にもスッキリした感覚が残る。

現代にもエンタテインメントとして素晴らしい小説を書く作家さんはたくさんいるけど、松本清張のような社会派作家は今後も出てこないのではないだろうかと思わせるほど、とても奥が深い。

今後は短篇だけでなく、長編にもトライしてみたい。特に「点と線」とか「ゼロの焦点」なんかはぜひ読みたい。

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