
ネット上のニュースサイトの編集者をやっているという著者が、その経験を元に日本のネット社会の現状を解説した本。
若干センセーショナルなタイトルではあるが、これ自体は「言い得て妙」だと思う。Web 2.0 だの双方向発信だのというキーワードがややもすると一人歩きしている感があるが、忙しい人というのはネット上であってもなかなか情報発信をする時間がとれないというのは確かだ (もちろん忙しい合間を縫ってがんばって時間をとっている人もたくさんいると思うが)。その意味で、有名人のブログへのコメントにせよ某巨大掲示板にせよ書き込みを繰り返したりしている人は時間にある程度余裕がある人だろうし、ヘビーユーザーともなれば「他にやることないの?」と思うぐらいの時間をネットで費やしていることだろう。そうしたユーザが盛り上がりを形成するというのがネットの本質であるということを忘れてはいけない、ということを筆者は忠告したいんだと思う。
また氏はこうした特性をふまえた上で、ネット上で販促活動をするための心得についても解説している。本来ネット上にはほとんどいないと思われる「リア充」(リアルな生活が充実している人を指す差別的用語らしい) をターゲットとした商品を売ろうとするのがナンセンスだというのは納得できる部分かな。また、「もうテレビの時代は終わった」などとする風潮もあるけれども、ネット上で流行っていることはたいていテレビの受け売りであり、逆にネットから実社会にまで波及したような "流行りモノ" は皆無だとする氏の主張は、目から鱗が落ちる思いだった。言われてみれば確かにそうで、実際この本で取り上げられている「ネットで流行ったモノ」についても正直知らないモノが多かったし、逆に芸能人の一挙手一投足なんかはネット上でもかなり話題になるわけで、いかに未だにテレビの影響が大きいかと言うことを如実に表していると思う。
多少筆者の愚痴と思われるような部分が気になったり、筆者の思想に偏りが見られる部分があるのが残念だけど、全体的に見て、さすがにプロだけあってよく考えているなぁ、という印象を受けた。