
角田光代の短編集。
主人公はいずれも20代後半から30代の女性。共通するテーマは「何かを待っている女性が主人公」ということらしい。が、読んだ限りは別に待っていること自体は主眼ではないようにも思えてきた。人間誰しも閉塞感を感じることはあるし、その状況を誰かが変えてくれることを待ってしまうタイミングというのはあるだろう。だから待つことと言うのは特別なことではなくて、その裏にある、それぞれの話の主人公が抱えるバックグラウンドと、やるせない気持ちをうまく表現した作品であるというような説明の方が正しいように思う。
で、読んでて、途中から雰囲気がちょっと変わったなぁと思っていたら、後付の解説を読んで納得。この本は2003年から2005年に出されたようだが、どうも角田さんには2004年の終わりあたりから作風が変わったとする評価があるらしい。確かに「空中庭園」がどうにもやるせないエンディングを迎えたのに対し、「対岸の彼女」では一歩前に踏み出すような形で終わったいたが、こうした「終わり方」に関する感覚が非常に大きく変化したように思う。おそらく、角田さん自身に大きな心境の変化があったんだろうと思わずにはいられない。どちらかというと退廃的だった以前の作品もよかったけど、自分は一筋の明かりが見えるような最近の作品の方が好きかな。
まあまあ面白かったが、やはりこれは女性はもっと共感できるんだろうなぁと思う部分も多々あって、それが分からなかったという点ではちょっと残念だった。