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藤巻健史: 100年に1度のチャンスを掴め!



かつてモルガン銀行東京支店長をもつとめた藤巻さんが、現在のサブプライムローン問題に端を発する金融危機の「その後」について独自の見方を綴った本。

この1年で世界各国の景気が悪くなったのは今更議論の余地はないだろう。特にサブプライム問題の本場 (?) アメリカでは、リーマンは破綻、あの GM ですら立ち行かなくなってしまったというニュースを見ると、今回の危機がいかに大きかったのかをいうことを感じざるを得ない。

アメリカでは急激な勢いで再生のための政策が打ち立てられ、それなりの効果が出てきているようだが、日本では残念ながら効果的な政策が出されていない。そればかりか、赤字国債を連発するばかりで財政を真剣に立て直そうという気すら感じられない。氏がこの本で主張するように、借金の棒引きの手段として急激なインフレが日本を襲うというシナリオは避けられないように思うし、そのために自分も何らかの対策は打っておかなければならないと痛切に感じた。

ただ、景気が回復するための政策として、資産価値を回復させる政策が有効であるとする論理には賛成しかねる。確かに今麻生内閣がせっせと行っている消費刺激策が有効でないというのには賛同するが、資産価値が上がることによって日本経済を浮上させるだけの効果が得られるとは到底思えない。もちろん、資産価値が継続的に上がれば海外から資金が流入してきて国としての経常収支が一時的に上向くのは間違いない。しかし、屋台骨である実体経済が立ち直らない限り、日本という国が元気になるはずはない。藤巻さんは日本は物作りの国から投資立国にシフトしろという主張をしているようだが、そんなことが果たして出来るのか。今ですら金融資産の形成が苦手な日本人が、そんな世界に果たしてついて行けるのか。その世界で生き残るには金融商品で他の国にはない差別化要因を打ち出して付加価値をつける以外にすべはないが、それは現実的だろうか。大事なのは、金融で生き残っていくと言うことではなく、日本人が得意とする分野で他の国には出来ない「何か」を売り出していくというところにあり、こうした分野を創造することこそ、今のこの時期の政策としてもっとも期待されるところだろうと自分は思う。

景気の予測というのは、誤解を恐れずに言えば競馬の予想と何ら変わりないと思っている。その意味で、専門家である藤巻さんの意見も、1つの可能性として頭に入れておく程度の理解で良いのかも知れない。

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