
奥田英朗の短編集。
5本の作品が収録されているが、主人公はいずれも30代の働く女性。同じ年代の女性とはいえ、周囲の環境も違えば与えられた境遇も大きく違うが、女性というだけで苦労することが多いというのは共通したテーマ。そんな苦労の姿をリアルに描いた作品に仕上がっている。
中でも最初の「ヒロ君」はかなり強烈だった。過程では旦那よりも稼ぎが多いという悩みを持ちながら、会社では男尊女卑きわまりない年上の部下を持つようになったという苦労を抱えるというのは本当に大変だろう。こうしたシチュエーションは古典的な日本企業では十分にあり得るだろうし、読んでいるだけで胸が痛くなる。でもそんなダブルに悩ましい状況を乗り越えていく姿を見るとちょっとだけすかっとした気分になった。
ほかの作品もそれぞれ印象的で、大変面白かった。まえまえから読みたいと思っていた作品ではあるが、予想よりも良かったと思う。