

恩田陸の長編小説。ミステリーの形をとっているが、基本的にはファンタジーもの。
舞台はとある島国 V.ファー。ここは英国の文化と日本の文化が融合した不思議な地であるが、もっと不思議なのはこの国には死者に再開することが出来る「アナザー・ヒル」という地があるということ。アナザー・ヒルには限られた人間が年1回「ヒガン」と呼ばれる時期にのみ入れるが、ここに遠い親戚のつてを頼って1人の日本人が足を踏み入れる。ジュンイチロウと言うその青年は民俗学を学ぶ学生で、V.ファーやアナザー・ヒルの伝承を調べたいと思い始めてヒガンに参加するのだが、やがてヒガンの最中に様々な殺人事件が起こり、V.ファーの住民達がその解決にあたるというのがおおよそのあらすじ。
描かれている世界観は非常によい。最初は「ヒガン」だの何だのと日本語が変形して根付いているという別の世界の存在について疑問を持つ部分もあったが、読んでいる内にその点は気にならなくなった。むしろ、アナザー・ヒルでの幻想的な事象の数々や、ラインマンをはじめとする登場人物のインパクトの大きさにどんどん吸い込まれていく感じで、下巻はほんとにあっという間に読み切ってしまった。
ちょっと設定が甘いと思うところもあるし、ミステリー的な結末を期待するとがっかりするかも知れないが、ファンタジーとしてみた場合には非常に秀逸。この世界観はなかなか作り出せないよなぁ。
アニメとかにしたら面白そう。あ、でもアナザー・ヒルはやっぱり想像して楽しんだ方がいいかもしれない。。。