
恩田陸のサスペンスもの。
地方都市で起こった凄惨な一家毒殺事件。その真相や犯人の考えていたことを突き詰めようとする人々の話。
ある章は第三者が当事者にインタビューするスタイル、またある章はごく普通の推理小説のように刑事の視点で事件を追うスタイル、そして別の章ではメモ書きや資料の寄せ集めのようなスタイルと、章ごとに描写のスタイルが違うというのがなかなか斬新でよい。
犯人といわれる人間が必ずしも犯人ではなく、それでいて裏で糸を引いていたと思われる人間が必ずしも黒幕ではないという点が興味深い。事件というのは決して一つの視点からだけでは説明が出来ず、常に多面性があり、普遍的な真実というのはどこにも存在しないんだというメッセージを含んだ作品であるように思えた。章ごとに変わるスタイルも、こうした混沌を表現する道具としてうまく機能していたと思う。
あんまりすっきりとした終わり方ではない (満貴子の気持ちが結局理解できなかった) けれど、緋沙子を追いつめようとする勢力が表情豊かに表現されているので、全体的にはなかなか楽しめたかな。
# しかし恩田さんの本はこういうすっきりしない終わり方が多いなぁ。