
久々の伊坂幸太郎。
初期の名作であり、これでブレイクしたと言っても過言ではない。
伊坂作品は、複数の物語が交互に描かれながら最終的に1つにつながっていくというパターンが多いけど、この作品では実に5つもの物語が互いに関連し合いながら進んでいく。しかも5つの物語の1つ1つのシーンすべてが別の話のどこかのシーンとつながっていて、どこか1つでも欠けてしまえば話が成立しなくなると言う極めて複雑で緻密な仕掛けが埋め込まれている。話が進んで徐々に関連が見えてくるときに得られる快感は、この作品ならではだろう。
特に金で何でも解決できると思っている画商の結末とか、自分を過信しているカウンセラーの行く末とか、またこれとは逆にすべてを見通してしまう高橋の存在とかを考えると、この作品で作者が言いたかったことというのは、背伸びしないで自分の出来ることを出来る範囲でやればいいじゃん、ということなのかも知れない。
非常に面白かった。