
作家・阿川弘之が八十余年の人生を通じて感じたことを、昨今の軽躁な世相と相対する立場にある「大人の見識」としてまとめたエッセイ。
いわゆる品格本ブームが記憶に新しいところだし、この本もそんな感じの本なのかなぁと思っていたが、内容は全然違った。。。
阿川さんは戦前生まれで、戦争も経験しているし、実際に海軍に弛緩していたこともあるが、このときの経験をまとめたような内容。当時の海軍の考え方や、戦争に反対した人を「見識ある」とし、逆に戦争に突入させた陸軍や当時の東條内閣を痛烈に批判している。
確かにあの無謀なる戦争に日本を突っ込ませた軍関係者や当時の日本政府に「見識」があったとは思えないし、この点については完全に agree なのだけど、逆に「見識ある」ということがどういうことなのか、という点については主観に頼っていてちょっと説明が足りないような気がした。結果的に戦争に反対する立場だったことだけをとりあげて「見識ある」としているように見えてしまうのは、考えすぎだろうか。
ただ、「温故知新」という観点でこの本を読むと、かなり勉強になる。多分に阿川さんの個人的な好き嫌いに傾いている気がしないでもないが、この本を書くに当たって再度調べなおしたというように、歴史的事実についてはおそらく正確に書かれているんだろう。
内容が期待していたものと違ったのでちょっと拍子抜けだったけど、まあ悪くはなかったかな。