
今の日本は不況であるとか中国やインドの驚異に立ち向かえるのかと、どちらかというと悲観論で報道されることが多い。しかし経済事情にも詳しく海外情勢にも精通した筆者が様々な視点から「日本力の力は捨てたもんじゃない」という主張を繰り広げた本。
確かに昔と比べると経済成長のスピードは遅いし、GDP で見れば中国やインドは驚異だが、それはあくまで日本の高度成長期と比較したときの話であって、諸外国と比較して日本が不況であるというのは自国に対する正しい理解とは言えない。世界には不況にあえぐ国がたくさんあるが、筆者の言うとおり今の日本はそれらの国と比べても圧倒的に豊かだし、何より日本初の文化が世界を席巻している現状を考えると、日本人はもうちょっと自信を持っていいんだろうと思う。それに、いくら中国やインドが驚異とはいえ、彼らの抱える弱点というのは意外と大きく、構造的にいずれ成長の阻害要因となるのは明らかであるから、ここ数年の経済成長に対して一喜一憂する必要はないようだ。今後の政治あり方という意味でも、高度成長期の常識であったハコモノ依存から脱却し、新しく多岐にわたるビジネスの成長を促進することが必要であり、そのために構造改革を進める必要があるという主張にはとても共感できる。
ディテールに関する記述が非常に弱いので、読んでいると「この人大丈夫か?」と思わざるを得ないところもたくさんあるけど (特にこの人は IT にめっぽう弱いようだ)、広い視野から俯瞰的に見た分析結果と捉えれば方向性は自分の考えとも合っているし、何よりこうした主張を2年半も前にしていた人がいたというのはちょっとびっくり。大変勉強になったし、勇気ももらった気がします。
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余談だけど、自分も今の日本は、物事を悲観的に見る風潮があまりにも強すぎるんじゃないかと思っている。バブル経済崩壊により世界のトップから滑り落ちた日本。このままじゃだめだというネガティブな考え方が強すぎるがために、いきおい自己保身に走る。そして保身の考え方が強いから、自分が叩かれる前に相手を過剰に叩く行動に出る。相手との関係が対等ならまだしも、これが「売り手」と「買い手」の関係になると「売り手」が必要以上に圧力をかける。過度のプレッシャーが細かなミスを呼び、それがやがて致命的な傷に発展する。その一部始終を見ているもんだから、オーディエンスは余計に自己保身的になるという悪循環。これにより自分の将来に対してきたいが持てなくなり、悲観論のスパイラルに陥っているのではないか、というのが自分の考える今の日本像。
もうちょっと他人に対して寛容になり、みんながポジティブな思考をしていけるようになれば、新しいことへのチャレンジがもっとしやすくなるだろうし、日本の発展にも貢献できるんじゃないかなぁ、と思う。