ある晩のことです。
良寛さまの住まいに、泥棒が入りました。
古い家の板戸はカギひとつかかっていませんでした。
「これだから、いけないんだよ。これじゃあ、泥棒さんに入って下さいって 言ってるようなもんだよ。リクエストにお答えして、入りますよ。」
泥棒はそう独り言を言いながら、板戸を開けて中に入りました。
窓から入る月明かりが、がらんとした部屋の中を照らしていました。
部屋の真ん中では良寛さまが薄い布団にくるまって寝ています。
泥棒は金目の物でもないかと、きょろきょろ見回しますが、あきれるほど何もありません。
「なーんだ。何もねぇーな。せっかく入ったのによぉ。」
泥棒はそう言って不思議がりました。
「それにしても、これほど物の無い家があるんだろうか。」
泥棒は、壁にかかっていた袋の中に手を入れてみますが、入っていたのは子供の遊び道具ばかりでした。
「子供でもいるのかなあ。それにしても、見あたらないようだが。」
泥棒が、せっかく入ったのに持っていく物が何もなさそうなので、残念がってると、その時です。
良寛さまが布団をはねのけ、布団の外へ転がり出てしまわれましたのです。
「なんだ、寝相の悪い坊主だな。まあ、いい。おかげで布団を持って帰れるぞ。」
泥棒はそうつぶやくと、布団をまるめて逃げていってしまいました。
寝る布団がなくなってしまった良寛さまは、泥棒がいなくなるのを待って、起きあがりました。
「あの泥棒はよほど困って泥棒をやっているんじゃろうて。かわいそうなお人じゃ。 あんな布団でも、いくらかの足しになれば良いがのお。」
良寛さまは、月明かりの照らしている部屋の中で、そう祈っておられましたそうな。
翌日、五合庵に泥棒が入った話は村中にひろがり、近所の子供たちが
良寛さまに布団をとどけてあげたとのことです。
心やさしい、良寛さまのお話でした。
told by mitsurin
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