良寛さまと意地悪ごんぞう


良寛さまは村で一番好かれた人でした。
反対に、村で一番の嫌われ者は渡し守のごんぞうという男でした。
ごんぞうは大酒飲みで、乱暴者だったからです。

ごんぞうは良寛さまをおこらせようと企みます。
良寛さまがごんぞうの渡し船に乗ったときに、意地悪をすれば
腹を立てておこるだろうと思ったのでした。

ある日のこと、良寛さまが渡し場へやってきて言いました。
「船頭さん、急いで向こう岸までたのみますよ。」

「はいよ、良寛さま。こんないい天気に、何をそんなに急がれる。
 のんびり行きましょうや。」
ごんぞうは急いでいる良寛さまを困らせようと、わざと船をゆっくりと
こぎだしました。

「船頭さん、急いでくれんかのお。」良寛さまは言います。

「そんなに急ぎなさんでも、よかろうに。のんびり行きましょうて。」
ごんぞうはまたもそう言います。
「だいいち、そんなに急いで、いったい何処に行きなさるんで。」
ごんぞうが良寛さまにそう問いかけますと、

「これは困った! わしは急いでいるんじゃが、いったい何処へ急いで
 行くところなんだ。すっかり忘れてしまったわい!わっはっは!」
(良寛さまが足の向くままに時間を過ごすことはよくあることでした。)

良寛さまがそう言うのを聞いたごんぞうは、なんだか馬鹿にされて
しまったように思いました。

そこで今度は、さおの棒を使って、良寛さまにわざと水しぶきがかかる
ようにしながら船を進めました。
良寛さまが腹を立てたら、ごんぞうはこう言ってやろうと思っていたのです。

「あんた、それでも坊さんなんかね。こんなことで腹を立てるようじゃ、
 一人前の坊さんとは言えねえな。」

ところが、水しぶきで良寛さまの着物も体も濡れてしまったのに、
良寛さまは気にかける様子すらありません。

ごんぞうはますます腹が立ってきてしまいました。
今度は、船をはげしく揺り動かし始めました。
良寛さまを怖がらせようというのです。

良寛さまは始めは船の揺れに身をまかせていましたが、
あまりに乱暴なごんぞうのゆらし方に、とうとう船から水中に
放り出されてしまいました。

「しまった!」ごんぞうは慌てましたが、良寛さまは水の中で
浮いたり沈んだり、水まかせでした。けれど良寛さまは泳げませんから、
このままではおぼれてしまいます。
ごんぞうは必死になって水の中から良寛さまをひっぱり上げました。

「船頭さん、あなたは私の命の恩人じゃ。ありがとの。」そう良寛さまは
言って、岸にあがると歩いていかれました。

ごんぞうは、ただぽかんとして、良寛さまのふるまいに驚くばかりでした。
そして、これはこれはすまないことをしたと本心から思ったのでした。

その日の夜、良寛さまが五合庵にもどると、すでに人のいる気配が
します。ごんぞうが一升瓶を持って五合庵に来て良寛さまを待って
いたのです。二人はお酒を飲みながら、すっかり仲良しになりました。

Told by Mitsurin


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