良寛さまと看板


良寛さまが書の大家だという評判が広まると、
良寛さまに一筆書いてもらおうという人がたくさんでてきました。
しかし、良寛さまは、物をもらった人への礼状以外は、なかなかすすんでは字を書いてくれませんでした。
「わしはまだ字がうまくないでのう。」と言って。

いっぽうで、良寛さまに大好きなお酒が出された時は、機嫌のいい時を見計らえば、続けて何枚も書いてくれることもあったそうです。

長岡に上州屋というお店がありました。そこの主人はぜひ良寛さまに店の看板用に文字を書いてもらいたいと思っていました。
ある日、そのお店に良寛さまが托鉢にやってきたので、店の主人はさっそく良寛さまを店の奥まで連れていき、なんとかお願いして字を書いてもらいました。
「上州屋」「酢醤油」という文字です。
店主はすぐさま店先にその紙を貼り出し、とても喜んでいました。

数年後のある日のこと。その貼り紙の文字を見た人が店主に声をかけました。
「ご主人、これは良寛さまの字ではないか。こんなところに貼っておいてはもったいない。私が代わりに字を書いてあげるから、良寛さまの貼り紙は大切にしまっておきなさい。」そして「上州屋」「御用 酢醤油」と書いてくれました。
店の主人は、それはたしかに違いないと思い、その人に言われたとおりにしました。

ふたたび数年たったある日のこと、今度は新しく書いてもらった貼り紙の文字を見かけた人がこう言います。
「ご主人、これは鵬斎先生の書かれた文字ではないか。こんなところに貼っておいては罰があたるぞ。大切にしまっておきなさい。私が代わりに同じ字を書いてあげよう。」そして「上州屋」「御用 酢醤油」と書いてもらいました。
店の主人は、それもたしかに違いないと思って、その人に言われたとおりにしました。

またまた数年たったある日のこと、貼り紙を見た人がこう言いました。
「店主、これは菱湖先生の文字ではないのか。こんなところに貼っておいてはもったいない。奥にしまって大切にしなさい。」そして代わりに書いてくれました。
「御用 酢醤油 裏三之町 上州屋」と。

この店の主人は、良寛さまのほかに三人の書家に字を書いてもらったことになります。
良寛さま、亀田鵬斎、巻 菱湖、富川大塊、という、いずれも有名な学者であり、書家の先生たちだったのです。

told by Mitsurin


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