良寛さまと柿の実


ある秋の日のことです。
良寛さまが道を歩いておりますと、どこかで子供の泣く声が聞こえて
きました。
子供が大好きな良寛さまのことですから、ほっておくわけにはいきません。

「いったい、どこから聞こえてくるのじゃろて。」

不思議に思った良寛さまは、あちこちを探してみます。
声はどうも上のほうから聞こえてくるようでした。

大きな柿木の枝の上に、子供が一人、柿の実を取ろうと登っては
みたものの、降りることができずに泣いているようでした。

それに気づいた良寛さまは、さっそく子供を降ろしてあげました。
柿の木には美味しそうな柿がたわわに実っているのを見ると、
良寛さまは思わず、こう言ってあげました。

「わしがかわりに実をもいできてあげよう。ここで待つのだぞ。」

良寛さまは木に登って、ためしにひとつ食べてみました。
「うん、これは甘い。甘柿じゃな。」
そう言って、むしゃむしゃと美味しそうに柿を食べ始めました。

あんまり美味しいものですから、良寛さまはまたひとつ柿を
食べました。
「うまい、うまい。実にうまいのぉ。」
良寛さまは木に登ったまま、柿を食べることに夢中になってしまいました。

下では子供が、柿の実が落ちてくるのを待っていましたが、
いつまでたっても良寛さまが柿の実を落としてくれそうにないので、
とうとう泣き出してしまいます。

その鳴き声を聞いた良寛さまは、ようやく子供が下で待っていることを
思い出しました。

「おお、そうじゃった。忘れておったわ。」

そう言うと、良寛さまは甘そうな柿の実をたくさん取って、
子供に渡してやったということです。

ひとつの事に夢中になると、他のことを忘れてしまうという良寛さまの
逸話はいろいろと残っているようですね。


told by mitsurin


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