〜静岡県の行政評価について考える〜

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独りよがりのトップレベル(続3)


あまり多くの人に知られていないが、静岡県には行政評価委員会というものがある。

いったんは終った形になっているから「あった」というべきかもしれないが、今後も継続される見通しになっているし、メンバーが大きく変わることも期待できないから、今も続いているという言い方にしておく。

委員会は昨年1月から今年の5月まで計4回開かれ、この6月に報告書を提出した。

この委員会について、担当の行政改革室は「外部評価」と位置付けており、県のホームページにも「外部の専門家が県行政を評価する」「公平に県行政を評価していただきます」と書かれている。

これはどうなのだろうか。

この委員会の委員長は、静岡県立大学の北大路教授である。
北大路氏は業務棚卸表の研究者として知られ、県が業務棚卸表を導入する際も、本庁の職員を中心に何回も研修を行ってその手法を広めてきた。静岡県は、北大路教授の指導によって業務棚卸表を導入し、定着を図ってきた。それをもって、県が行政評価の取り組みをすすめていると言っているのだ。

ではこの委員会が、4回の会議を経て実際に行ったことは何だろう。
業務棚卸表を県民に分かりやすいものにするために、指標や表現方法を改善してレベルアップをはかったこと、県の行政の姿を概括的に捉えられるように、業務棚卸表の中から代表的な指標を選び出し主要指標としてまとめたこと、そういうことだった。

静岡県に業務棚卸表を導入し、定着させようとしている人が、それをレベルアップさせたり、内容を県民にわかりやすく伝える方法を検討することが、なぜ外部評価になってくるのだろうか。

県民の目から見れば、今まで推進してきた人が、今後も推進させるために開いている内輪の会合にすぎないと思える。

6月に提出された報告書には、驚くほど業務棚卸表の有効性についての記述が目立っていた。

「業務棚卸表は、係・スタッフごとに作成されており、こうした行政の組織単位(係・スタッフ)に施策目標を明らかにする試みは、その仕事の成果を測りながら、効果的、効率的に施策を推進する点で、大きな意義がある。」

「業務棚卸表によって、組織単位の目的や施策の妥当性だけでなく、具体的な目標や成果を数量で把握し、評価することが可能であり、個別組織の業務の状況を知る上で、極めて有効な手法といえる。」

業務棚卸表を静岡県に導入し、定着させようとしている立場からすれば、そういいたい気持ちもわからないでもないが、それでいいのだろうか。

行政評価の手法として考えた場合、業務棚卸表には、行政単位の自己評価という一定の限界がある。業務棚卸表をもとにして政策評価を行うにしても、その手法の限界をよく分析した上で、その欠陥を補うためにどのようにすべきかについての検討がどうしても必要になる。

今回の報告書を公表する段階でも、ある程度その点は意識され、別の方法も取り入れようとした様子も見られた。しかし、実際には、業務棚卸表の内容を別の観点から取りまとめたり、指標の選び方を検討したりしただけで、手法自体についての批判的な検討は行われなかった。

欠陥を補おうとすれば業務棚卸表の手法から外れて行くことになり、手法自体の有効性の問題にどうしても触れざるを得なくなってしまう。

推進する側がそんなことはできないし、他の委員やお願いしている事務方がそんなことを言い出すわけにもいかない。その結果、業務棚卸表の枠の中から1歩も抜け出せないままで進むことになっているのではないか。

こういうところを見ると、報道関係者の言っていたように、現場では学者の自己満足と酷評されているというのももっともな気がする。

推進する側が推進を前提として検討する、それに評価という名前を付けて、第三者評価、外部評価として公表していく。だが実態はといえば、内輪の自己評価でしかなくなってしまうのだ。

過去にも、静岡空港の建設計画において、オオタカの保護対策をめぐり、対策を検討する委員会とそれを監視する委員会の委員長が同一人物だったことが問題になった。

このような自己完結性について、県民がどれほど言い知れぬ不満を抱いているのか、現在の県の行政が理解することはない。

県民をのけ者にして、自分たちだけで好き勝手にやっている、それを自分たち自身ですごく立派なことをしているというように自己評価し、それを宣伝する。いったい県民はどこにいるのだろう。

第三者性の欠如、これは現在の県の行政において非常に重大な欠陥であるが、このことは、県民の不在、県民参加が全くすすめられていないことと大いに関連がある。

静岡県の行政評価は、第三者性の欠如という限界の中で行われている。 これを外部評価とか客観的評価と誰が呼べるのだろう。

2001.7.26 (つづく)



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