JISは、昭和昭和24年に制定された工業標準法(第17条)に基づく国家規格。 工業技術院に置かれている「日本工業標準調査会」の議決を経て制定される。
同法第1条の「法律の目的」には
「この法律は、適正且つ合理的な工業標準の制定及び普及により、工業標準化を促進することによって、鉱工業品の品質の改善、生産能率の増進その他生産の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図り、あわせて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」とある。
JISは現在約8000規格、約800品目に及ぶ。
製品の設計・製造などで広く活用され、各種強制法規、約5000カ所で引用されているという。
許可工場約13000、90%が中小企業、海外工場も約200に達する。
JISは、昨今の規制緩和、国際規格との整合性(後述)、及び技術革新や消費者ニーズの多様性などの流れを受けて、全面的に改訂作業に入っている。
この工業標準化法も、昨年1997年3月に大幅な改正が行われた(1997年9月26日施公)主な改正内容は次の2点。
生産者・使用者・消費者など関係者自らが規格の必要性の有無を検証、国家標準として整備する必要のないものは積極的に廃止、または、民間団体による規格に移行。
2 認定制度の見直し
・民間提案によるJIS規格制定を促進するため、規格制定手続きを簡素化する。
・JISマークの認定業務を民間機関に開放する。
・国際ルールに基づき、試験事業者認定制度を整備し、将来的には他国との相
互承認により、貿易の円滑化を図る。
平成7年1月、アスベスト関連の、JIS A5430「繊維強化セメント板」、JIS A5423「住宅屋根用化粧スレート」、及び、JIS A5426「スレート・木毛セメント積層板」は、建設関係規格の体系化の観点から、それまでの
JIS A5403 石綿スレート *(A5430に統合)
JIS A5413 石綿セメントパーライト板 *(A5430に統合)
JIS A5418 石綿セメントけい酸カルシウム板 *(A5430に統合)
JIS A5423 住宅屋根用化粧石綿スレート A5423
JIS A5426 石綿スレート・木毛セメント合板 A5426
JIS A5429 スラグ・せっこう系セメント板 *(A5430に統合)
の6規格を体系的に整理統合し、国際規格であるISOを参考として、見直しが行われた。
見直しの目的は、「使用目的が同様の製品はできるだけ整理統合して、規格の簡素化を図ること」とされている。
具体的な流れは、平成5年に工業技術院から、原案作成協力団体である「スレート協会」対して、6件の規格改正案の作成依頼がなされ、それを受けて同協会が「JIS改正原案作成委員会」を発足させ、審議を行い、平成6年9月20日の日本工業標準調査会建築部会での議決を経て、平成7年1月に改訂された。
規格は5年ごとに見直しされることになっている。
この原案作成委員会の事務局はスレート協会、委員長は東京大学工学部の菅原進一氏。委員は長を含め22名。他の人の所属は以下の通り。
武蔵工業大学、建設省住宅部、通産省生活産業局、東京消防庁、建設省建築研究所、工業技術院標準部、大成建設、竹中工務店、日本建築大工技能士会、住宅金融公庫、住宅都市整備公団、建材試験センター、プレハブ建築協会、浅野スレート、アスク、ノザワ、ニチアス、クボタ、全国木毛セメント板工業組合、セメントファイバーボード工業組合、日本規格協会。
この改定に当たっては、規格の名称から「石綿」の表示をなくしてしまった。
日本規格協会の『日本工業規格』によれば、
「“原料及び製造”については、生産技術の進歩、製造技術の多様化から、使用原料の品位、使用量などを細かく規定することは、現状にそぐわないため、適用範囲の中で(別の箇所では表の中で)原料を規定するにとどめた。」という。
この規定が、アスベストによる労働者の保護を目的とする、各種の労働法上の規定に反しないのかどうか(具体的には、労働安全衛生法による表示の義務との関連など)、また、発癌物質として有害性が認められ、法律上の規制がある物質を含有している建材と、それ以外の建材を同一の規格として認めていることについての、規格自体の妥当性、言い換えれば、このような規格の制定の仕方が工業標準法の目的に合致しているのかどうか、という点が大きな問題となる。
これは結果的には、JISという規格の意味、つまりJISとは何なのかという、「規格」制度自体の根本的な問題につながってくる。
もともと「規格」と環境問題、労働問題、規格と貿易問題などは、規格をめぐる重要な論点の一つで、近年、国際規格の普及や、環境問題の高まりの中で、また改めて注目を集め、JISの新たな流れの中でも、中心課題になっている。
担当者も、今回の回答の意味が、単にアスベストの問題だけにとどまるものではないということは十分承知しているはずで、重要性は認識していることだろう。そのような意味でも、今回工業技術院の担当者が通産省の担当者と一緒に、JISとアスベストの問題についてどのような回答をするのか、非常に注目に値する。