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1999年度
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省庁交渉 省庁交渉の記録


1999年度 

運 輸 省
運輸省側出席者
@海上技術安全局安全基準課 補佐官 平原 祐
A 海上技術安全局安全基準課 国際第2係長 板倉輝幸
B 海上技術安全局造船課 補佐官 吉田正彦
C 海上技術安全局造船課 調査係 井田充彦
(窓口: 海上技術局安全基準課管理係長 、TEL 3580-6397/FAX 3580-5047)
全国連側出席者

7名: 古谷杉郎、老田靖雄、野沢実、西田隆重、外山尚紀、内田雅子、糸山敏和


2000年6月7日(水)11:00〜12:00 運輸省安全基準課会議室

1. 昨夏EUが2005年までのヨーロッパにおけるクリソタイル全面禁止を決定し、アスベスト産出=輸出国であるブラジルもEUの決定にならう意向を発表している。アスベストの禁止に向かう国際的潮流はもはや確定したと言える。
アスベスト禁止に向けたこのような国際的な情勢を踏まえ、日本においてもクリソタイルを含めたアスベストの輸入・製造・使用等の禁止を早期に実現するようイニシアティブを発揮されたい。国際的な情勢に関する貴省としての認識もお聞かせ願いたい。

2. 国際海事機関(IMO)におけるアスベスト規制をめぐる昨年以降の動向について、承知されていることをお聞かせ願いたい。
また、日本政府として、現存船に設置されているアスベスト対策についても、国際海上人命安全条約(SOLAS)に盛り込むよう積極的に働きかけたい。

【回答】 (IMOにおける)昨年以降の国際的な動向を申し上げると、昨年までFP(防火小委員会)およびDE
(設計設備小委員会)において、まず、新規に船舶に設置するアスベストの使用を禁止するSOLAS(海上人命安全)条約の改正が審議されていて、今年の4月に行われた第43回のDEにおいて最終的に案を小委員会として同意して、今年5月に開催された(両小委員会の親委員会に当たる)MSC(海上安全委員会)でDEから改正案が報告され、それが特段の議論なく承認された。今年11月末にMSCの第73回の会議があるが、そこでもう一度承認のあと採択という手続を踏んで、順調にいけばその時点から1年半たった2002年7月から効力が発効するという段取りになっている。承認の時にも特段の反対もなく承認されたと聞いている。
すでに現存船に設置されているアスベストの件については、すでにこの話はDEの方にのっており、
DEで今後検討する。検討の内容としては、すでにあるWHOやILOで決められている条項等を考慮して、現在すでに船舶に設置されているアスベストの適切な管理に関するガイドラインを作ろうということで、小委員会の審議目標としては2001年、来年にも最終化しようという段取り。これについては、
新規の設置に関しては「エッセンシャル・ユース」というものがあって、どうしても使わなければいけないような部分、高温だとか高圧のライニング部分とかについては適用除外ということになっているが、日本としては、それも禁止すべきだという対応を従来からとってきたので、現存船に関するガイドラインについても積極的に関与していきたいと考えている。

* 5月のDEでロシアは承認を「留保」したとのこと。

3. IMOによるアスベスト規制の国内実施にあたっては、いわゆる「例外3項目」にとらわれず、欧州委員会指令と同等の「実質完全禁止」にて、国内造船所を規制されたい。

【回答】
わが国としては実際にもう使われていないので、全部禁止したらよいではないかと主張してきたわけだが、結果としていくつか、完全に代替品がない国もあるということで残っているという状況。国際条約で決まっているのにわが国だけ特別の規則を作るというのは非常に難しい面もあって、一応規制体系としては条約どおりやろうと考えている。

* 条約改正によって、現実には使用されていない例外品目が「使ってよいのか」というかたちで認識されて逆戻りすることがないよう指導等を徹底するよう求めたところ、 「逆戻りさせようという意図はあるわけではないので、そういうことは徹底していきたいと思う。」

* 「ヨーロッパでも、国際条約であるSOLAS条約に違反することはできないはず」とのこと。

4. 国内造船所における現存船のアスベスト除去対策強化のために、「船舶修理等に係るアスベスト飛散防止対策マニュアル」を作成し、国内造船所へ対策の徹底を図られたい。

【回答】
アスベストは1970年代くらいから実質的に使われなくなっている中で、1970年代以前に作られた船は非常に老朽化しているわけで、時期的にはそういう船については船としての機能をもう近々、どんどん終わってくる。そういう船は実際にはリサイクルというか解撤されて、鉄資源というかたちになっていくという状況にある。
そういう状況の中で、除去というのが既存船から抜きましょうということであれば、いずれにしろ近々そういうかたちでなくなっていく船に対して、わざわざ造船所で抜かせるのか。これは逆に環境上非常に問題があるのではないかと思っている。
そうではなくて、一般の船が改造される際に、労働者の健康確保という観点からの対策ということであれば…。基本的には(アスベストは)断熱材などあまり改造されにくいところに使われているので、(そういうことは)ほとんどないのではないかと思うのと。もうひとつは、そういう方面については労働省所管の労働安全衛生法の対象となっているので、われわれの方でそれを作ってどうこうというのはちょっとなかなか厳しいものがある。

* 「ガイドラインが作られれば国内的にも対応するつもりだが、ガイドラインの位置づけ等はこれから議論されること。」
「アメリカがたたき台のようなものを作っていてこれをたたき台にして審議していこうかという合意はされているが、どういうふうになるかは先はみえない。」

* 「IMOでの議論は、造船所(における労働者の安全確保)を対象としたものではなく、船舶所有者というか船舶そのものを対象にしたもの。船に乗っている人の健康対策とかが中心だから、監視して被害を与えるような状況にならないようにモニタリングをする。モニタリングしていて状況が悪いようであれば、替えようとか、どちらかというとそういう感じ。」
「国内的対応も日本の船主を対象としたものになるが、日本の造船所に入ってくる船の船主が国内ばかりとは限らない。」

* アスベスト除去を直接の目的としていない修繕作業でアスベスト粉じんが飛散される場合も多い。欧米諸国では、アスベストを含有している箇所にはラベルを付したり、赤ペンキを塗ったりして一目でわかるような対策をとっているところもあり、そのような対策を日本においてもとれないかと要望。
「どこにどんなものが入っているかということはすごく問題がある。バーゼル条約の議論の中でも、そもそも船の中にはどんな廃棄物があるかわからない。造船は総合アッセンブリー産業だから、20年も30年も前に使っていたものについて、メーカーも違うし、1船ごとに特定できるかというとできない。そこが大きな問題になっている。」
「アスベスト吹き付けと書かれている場合などは別だが、設計図面にもそこまで書かれていない。購入記録からと言っても、今も使用しているならともかく、20年も前のものはわからないし、修繕等を行うのはそもそも自分のところで造った船とは限らない。一括購入で過去にさかのぼって履歴も特定できる軍の場合なら別だが。」

* 労働省の所管というが、例えば建設省関係の(財)日本建築センターで「既存建築物の吹付けアスベスト粉じん飛散防止処理技術指針・同解説」を出していたりもする。運輸省関係でも(財)船舶解撤事業促進協会が「船舶解撤マニュアル」を作っていて、環境保全・公害防止や安全衛生対策についても指示している。しかし、作られたのが1991年と古いため廃掃法などその後の動きが反映されていないということはあるが、運輸省関係でも例がないわけではない、などと指摘。
「解撤はつぶすのがわかっていて、しかも古い船であれば(アスベスト等が)入っていることはわかっているから、必ずそういう対応しなければいけない。最初から一定の準備をして被曝しないようなかたちで対応してくれと言える。船の修理の場合に、全然やる気はなかったのにたまたまやってしまったという話だと、どうやって作っていくのかなかなか難しいと…」
「労働安全衛生法の方でなにもない中から、また、国際的な決まりがない中で、運輸省独力でいちから作るというのも困難」
「アンブレラ(傘)法がなくては、責務も権能もなしに予算当局も認めてくれない」という趣旨の発言もあったが、IMOのガイドラインが労働安全衛生を対象としたものではなかったとしても、これへの対応を契機に労働安全衛生や環境対策ともリンクさせた対応をとるよう、重ねて要望した。

5. 日本および日本企業が事実上保有している(いた)船舶の外国における解撤等にあたっては、有害廃棄物の国境を越える移動とその規制に関するバーゼル条約を遵守させること。また、日本の海外進出企業にも上記と同様に指導を強化されたい。

【回答】
ご存知のとおり、バーゼル条約の適用についてはUNEP等において国際的な審議が行われている。その中で、そもそも船舶解撤がバーゼル条約の対象になるかならないかというところがそもそもの議論としてある。もうひとつは、対象になるのではないかといっている国々の中でも―日本も条文上からは明らかに適用になるのではないかという姿勢をとっているのだが、ただ実際の船舶の運行、船舶の有り様を考えたときに、そもそも廃棄物が発生してそこからの物理的な移動を規制しようという今のバーゼル条約の体系の中では、実際上規律し得ないのではないか。要するに条約を適用することが技術的にできないのではないかと―これは、規律すべき、バーゼル条約の対象となるしているノルウェーなども言っているわけで、そういう現実的な問題がひとつ。UNEPの中でリーガル(法律)ワーキンググループと技術ワーキンググループとふたつあるが、法律ワーキンググループでは、実際にバーゼル条約を船舶解撤に適用できるのかというところを議論することになっている。今現実問題としてバーゼル条約を遵守させるというのは非常に難しいと気にはなっている。(ノルウェーなどは、バーゼル条約ではできないから、別のリーガル・スキーム(法的仕組み)がいるとしており、リーガル・ワーキンググループでは、できないとしているノルウェーのペーパーを検討してみようということになっているとのこと。)
いずれにしても、船舶は最終的に解撤される際にはじめて廃棄物として、有害なものとして世の中に出てくる。そこを放置しておくということでは全然なく、UNEPのテクニカル(技術)ワーキンググループの方で、解撤ヤードの方の技術基準、ガイドラインを作って、解撤の際の適切な施設管理等というところでやれるかたちで環境保護を図っていくという作業が、ようやくはじまったところです。こちらは、テクニカル・ガイドラインの骨子をいくつかのリーディング・カントリーが作って今後議論になるという段階である。これは2001年12月に予定されている次回バーゼル条約の締約国会議までを目標に作業をしようということになっている。
そういう状況なので、バーゼル条約を遵守させるということについては、そのような国際的動向をみながら適切に対処していきたい。



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