1999年度 厚生省 運輸省 環境庁 建設省 通産省 労働省 |
日頃の貴職の御活躍に敬意を表します。 「発がん物質・アスベスト」の国際的な命運はもはや定まったかのように見えます。昨夏EUが2005年までのヨーロッパにおけるクリソタイル全面禁止を決定し、アスベスト産出=輸出国であるブラジルもEUの決定にならう意向を発表しています。カナダは、1996年のフランスのアスベスト禁止決定を自由貿易の原則を侵害する「非関税貿易障壁」であると世界貿易機関(WTO)に訴えていますが、アメリカはフランス・ EUを支持する立場を明確にしています。近々予測されるWTOの紛争解決処理手続の結論がカナダの訴えを退ければ、国際的潮流は確定したと言えるでしょう。 そのような中で、日本は引き続き減少傾向とはいうものの、昨(1999)年の輸入量も117,143トンと、10 万トンを割るにいたらず、国際的な孤立状況をますます深めています。 不幸なことに、しかし予測どおりに、日本においても被害の顕在化が明らかになってきました。新聞報道されたように、人口動態統計により把握できるようになった「中皮腫(胸膜、腹膜等にできるアスベスト曝露特有のがん)」による死亡件数が1995-98年の4年間に2,243人にのぼっていることが明らかになったのです(別添2月16日付け毎日新聞参照)。肺がん等も含めたアスベストによる死亡者数はすでに年間数千人になっており、日本におけるアスベスト使用の歴史的経過を考えれば、今後も増加し続けることは必至であると推測できます。 アスベスト疾患は初回曝露からの潜伏期間が数十年にもなることから「静かな時限爆弾」とも呼ばれており、抜本的な対策の樹立が一刻も早く望まれます。一日も早く日本政府として、アスベストの全面禁止を導入するとともに、要請内容を含めた抜本的な対策を樹立するよう要請する次第です。なお、同様の趣旨の要請を、通商産業大臣、労働大臣、厚生大臣、建設大臣、運輸大臣、環境庁長官宛てに行っていることを申し沿えます。
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