1999年度 厚生省 運輸省 環境庁 建設省 通産省 労働省 |
2000年6月15日(木)13:30〜14:30 合同庁舎第5号館共用第2会議室 1. 昨夏EUが2005年までのヨーロッパにおけるクリソタイル全面禁止を決定し、アスベスト産出=輸出国であるブラジルもEUの決定にならう意向を発表している。アスベストの禁止に向かう国際的潮流はもはや確定したと言える。 アスベスト禁止に向けたこのような国際的な情勢を踏まえ、日本においてもクリソタイルを含めたアスベストの輸入・製造・使用等の禁止を早期に実現するようイニシアティブを発揮されたい。国際的な情勢に関する貴省としての認識もお聞かせ願いたい。 【回答】 ご指摘のとおり、国際的にクリソタイルの使用禁止を行う国が増えているということは承知しているので、今後とも国際動向を踏まえて可能な限り情報収集等行って、その結果を踏まえたうえで今後の検討をしていきたいと思っている。 2. 4月に開催された日本産業衛生学会においてアスベスト粉じんに係る許容濃度が勧告されたことも踏まえて、早急に、すべての種類のアスベストに係る作業環境管理濃度を0.1繊維/cm 3以下に引き下げられたい。 【回答】 管理濃度については、日本産業衛生学会の許容濃度や米国産業安全衛生専門家会議の曝露限界の勧告等の科学的根拠、作業環境測定技術の精度、それから事業所における環境改善の工学的技術等を考慮して定めているところであり、日本産業衛生学会の勧告も参考とし、今後とも必要に応じその見直しについて検討していきたいと考えている。 * 4月の日本産業衛生学会で暫定値が出されたことは「承知している」。 「われわれとしては管理濃度というのはアスベストだけをやっているのではないので、他と合わせて検討していきたい。」 「近いうちに見直しを行う。」 「いつから始めるということは明確には言えないが…」 「アスベストを含めていくつかの物質について見直しが必要になるものがあると考えられる。」 3. 2000年4月1日に施行された改正労働安全衛生法に基づくMSDS(化学物質等安全データシート)について、以下のような対応をされたい。 @ 化学物質管理促進法に基づくMSDS(化学物質等安全データシート)は、発がん物質については指定化学物質を0.1質量%以上含むものとされており、一方、労働安全衛生法に基づくMSDSは発がん物質についても1%超含有するものを対象としており、現場で混乱が生ずることが懸念される。労働安全衛生法関係でも、発がん物質については0.1質量%以上含有でそろえるようにされたい。 【回答】 労働安全衛生法のMSDSを規定する際に、労働衛生の専門家の意見を踏まえて、特定化学物質等障害予防規則において対象範囲を1%をこえるものとしていてこれにそろえるかたちで、1%をこえるものとしたところである。労働安全衛生法のMSDSは、法令で定める内容が記載されていればそれで十分要件を達しているわけだから、PRTR法等他の法令で使用しているMSDSでも差し支えないので、何ら不都合は生じないと思う。 A アスベストに関するMSDSには、肺がん、悪性中皮腫等を引き起こす発がん性があることを明示させるようにされたい。また、これまで要請してきたように、労働安全衛生法第57条(表示等)の表示内容の例示通達についても、廃止または改正し、肺がん、悪性中皮腫等を引き起こす発がん性があることを明示させるようにされたい。 【回答】 MSDSの記載事項は人体への作用を記載することは含まれているので、発がん性についても当然記載されるべきものと、労働省としては考えている。今後とも正しい内容のMSDSが交付されるとともに、そのMSDSが活用されて適切な化学物質管理が行われるように指導していくこととしている。 表示制度の例示通達についても、人体に及ぼす作用については記載するように定められているので、人体に及ぼす作用というのは発がん性を含むと考えているので…(語尾不明瞭)。 B 化学物質管理促進法に基づく「指定化学物質等管理指針」(2000年3月30日付け環境庁・通商産業省共同告示)では、第2の2「化学物質の使用の合理化対策」の(1)のイ「代替物質の使用及び代替技術の導入」として、「指定化学物質等取扱事業者は、指定化学物質等の使用の合理化に資する代替物質の使用及び物理的手法等の代替技術の導入を図ること」とされている。労働省としても、「化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関する指針」等において、とりわけアスベストについて、代替化を明示するようにされたい。 【回答】 化学物質指針の中味は、アスベスト等の特定の化学物質に対して指針を定めたものではなく、もっと一般的な管理対策の指針を定めたもので、実施事項としてはその指針の中で、化学物質等への曝露を防止しまたは低減するための措置を講ずることと記載され、そのための措置が書かれている。代替化については、昭和51年5月22日付け基発第408号として「石綿粉じんによる健康障害予防対策の推進について」という通達において、石綿代替措置の促進についても定めており、引き続き本通達の周知徹底を図っていきたいと考えている。 4. 昨年、ILO石綿条約の批准に必要で現行法令が満たしていない要件についておうかがいしたところ、主な点は、@すべての職場での曝露基準、A石綿除去作業の資格要件、B作業衣の自宅持ち帰り禁止、をあげられたが(不正確であれば正していただきたい)、これらの点を改善するようにされたい。 【回答】 労働省としては条約の批准というのが最終目的ではなく、労働者の健康確保をするということが目的としている。その目的のために、平成7年にアモサイトとクロシドライトの製造等を禁止するために労働安全衛生法令の改正を行ってきたところである。引き続きここにあげられた3点の課題を含めて、条約の批准については引き続き検討していきたい。 建設現場等の屋外における作業環境測定にあたって個人サンプラー方式を活用する場合には、日本石綿協会が一定の条件下では「曝露濃度=管理濃度×(0.3〜0.4)」であることも考慮して評価基準を設定するようにされたい。 【回答】 個人サンプラー方式を活用する建設現場等の屋外における作業環境にあたっては、平成12年1 月から、日本作業環境測定協会の自主的な取り組みとして行っているところであるが、現段階では測定手法、改善手法が完全なものとして確立していないため、国として法令等で評価基準を設定することは困難ではないかと現段階では考えている。このような測定手法、改善手法が確立した段階で検討していきたいと考えている。 * ILO石綿条約を批准できない理由はこの3点だけではないが、3点が主なものであることは再確認。 * 作業環境測定協会の試行の取り組みは労働省の委託事業ではない。が、ある程度の成果が得られた段階でガイドライン等を設けるなり、労働省としても検討していきたい。 5. アスベストに係る健康管理手帳の1998年度以降の新規交付件数および年度末所持者総数、検診受診状況をお聞かせ願いたい。 同制度の一層の周知を図るとともに、現行の「両肺野に石綿による不整形陰影があり、又は石綿による胸膜肥厚があること」との健康管理手帳公布対象者の要件を拡大するよう検討されたい。 【回答】 1998年度には新規交付者数が75件、年度末時点での所持者数が202名、健診受診者数が216 名となっている。1999年度については現在取りまとめ中。 健康管理手帳の交付の条件については、重度の健康障害を引き起こす蓋然性が高いということが大前提となっていて、この前提をもとに専門家の検討会の結果を集約して、その結果を踏まえて現行のとおり定められたものである。 * 神奈川県の資料によると、1998年の横須賀の米軍基地の退職者が30件くらい、その後も含めて87 件になっており、その後の増加分のかなりの部分を占めることになるだろう。神奈川労災職業病センター等の要望を受けて神奈川県が3年間、300万円をかけて実施した米軍基地退職者に健康管理手帳のことを知らせる事業の報告書を提供し[70頁参照]、このような努力の教訓も踏まえた周知徹底対策を検討されたいと要望した。 6. アスベストによる肺がん・中皮腫の1998年度以降の労災補償状況をお聞かせ願いたい。 じん肺による労災補償状況のうち石綿肺の件数がわかるようにされたい。 双方について、業種、職種、性別、年齢、曝露歴等の情報を把握するようにされたい。 【回答】 1998年度のアスベストによる肺がん・中皮腫の労災補償状況、新規支給決定人数は42人。石綿肺はじん肺の一部であり、労災補償状況についてもじん肺として把握している。石綿肺として把握しているものではない。また、粉じん作業に従事する労働者の方については、アスベストだけではなく他の様々な種類の粉じんに曝露されている方というのがたくさんいるので、石綿肺だけで労災認定状況を把握するのは事実上かなり難しいのではないかと考えている。また、アスベストによる肺がん・中皮腫、石綿肺については認定基準等もあるので、新しく職種別、業種別等の統計をとることは、現在ではしていない。 * 10件台が長く続いた後、数年間20件台、1998年にいきなり42件に増えたことをどう分析しているか? 「具体的にははっきりとわからない。ただ潜伏期間が長く、曝露してから長期間たってから発症するものなので…」 * 人口動態統計で明らかになった中皮腫による死亡が年間600件と比べて少なすぎると考えている。補償が受けられる人々にそのことが伝わるための前向きの努力をされたい。肺がん・中皮腫で労働基準監督署に相談しても、アスベストだと粉じん曝露だから、じん肺管理区分申請―都道府県労働基準局の方へ行ってくれ(その結果管理1―じん肺所見なしで放置された例も)と対応している監督署もあるという実態も指摘。 7. 1995年改正労働安全衛生法令によるアスベスト使用建築物の解体・改修工事対策の施行状況(年度別の石綿等除去作業の計画の届出件数等)についてお聞かせ願いたい。 また、以下の点を含め、今後さらに対策の強化を図るようにされたい。 【回答】 計画の届出件数は、1998年度993件、1999年度881件。 ・ 大気汚染防止法に基づく届出要件との整合化を図ること。 【回答】 大気汚染防止法とはもともと届出の趣旨が異なっているので、要件が異なることはやむを得ないと考えている。 ・ 発注者、施工主に制度が周知されておらず、責任が十分にとらされていないことからズサンな解体・改修工事が行われる事例が多々見受けられるところであり、発注者、施工主の義務・責任の強化を含む具体的対策をとること。 【回答】 労働安全衛生法では、発注者、施工主問わずすべての事業者に様々な義務を課している。強化ということに関しては今後の検討課題。 ・ 届出違反等に関する申告・通報等に対して、迅速かつ適正に対処すること。虚偽の報告等に対する対応を是正すること。 【回答】 当然労働基準監督署において申告だとか通報といったようなものがあれば、それに基づいて速やかに対応している。また、その対応の中で問題等があれば、直すように指導しているところでもあると。通報、申告だけに限らず、日常的にも一定程度見ているというところで対応しているところ。 ・ 1980年以降に施工された「岩綿吹き付け等」でもかなりアスベストを含有するものがあるので、その旨を周知・徹底して厳格な法令の適用を図ること。 【回答】 (吹き付けが現在も行われているという趣旨に受け取ったのか、現行労働安全衛生法令の吹き付け「原則」禁止の内容説明とその遵守という回答にとどまった。) ・ 石綿吹きつけの除去作業だけでなく、石綿含有保温材、成形板等使用建築物の解体等作業を、また、建築物だけでなく船舶等も含めた同様の作業を、使用状況の調査、届出、作業場の隔離等の対象に含めること。 【回答】 吹き付け石綿の除去作業と石綿含有の保温材が使用されている建築物や船舶の解体とは、石綿の発散量だとか作業形態だとかが非常に異なっている。平成7年に改正された労働安全衛生法令において一律的に規制を行っていないのはこういった理由によるもの。石綿の使用状況の調査については、現行法令でもすでに規定されている。 ・ アスベスト除去・解体作業に係る特別の作業資格要件を導入すること。 【回答】 石綿は特定化学物質なので、その取り扱いについては、特定化学物質等作業主任者による指揮が義務づけられている。また、雇入れ時とか作業内容変更時の教育についても、義務づけられている。したがって特化則を遵守することによって足りると考えている。 ・ 代替製品および代替化の状況に対する情報を提供して、代替化の促進を図ること。 【回答】 石綿の代替繊維としてガラスウールとかロックウールとかの使用が進んでいると思うが、労働省としては、平成5年1月1日に基発第1号という「ガラス繊維及びロックウールの労働衛生に関する指針について」という通達が出されていて、そこで代替製品の労働衛生管理の徹底を図っている。引き続き本指針の周知徹底を図っていく。 ・ 関係地方自治体と労働基準監督署で定期協議を実施し、現場レベルでの情報交換、連携を強化すること。 【回答】 現段階でも地方公共団体と地方労働局は一般的には情報交換できるようになっている。 8. 労働安全衛生法第3条第3項で「注文者の配慮義務」が、また、第31条の3で「注文者の違法な指示の禁止」等が定められているが、建築現場の解体・改修工事に際し、アスベスト等の有害な粉じんの曝露防止が困難な工期や金額での工事の発注が頻発している実状がある。 廃棄物に関しても同様の問題が指摘され、建設リサイクル法等でも「注文者の配慮義務」が強化される予定である。建築業における労働安全衛生上の「注文者の配慮義務」に、どのような担保をもたせるのか、今後の方針をお聞かせ願いたい。 具体的な事例としては、吹き付けアスベスト除去工事の届出がほとんど実施されていない現場がみられ、昨年7月に東京都文京区立保育園において、改修時に届出のない吹き付けアスベスト除去工事による飛散があり、問題となった。今後吹き付けアスベストの解体・改修の増加の時期となり、どのような監視・監督体制を強化するお考えか、お聞かせ願いたい。 【回答】 労働安全衛生法で労働者の安全衛生を確保する責務というのは労働者を雇用する事業者にあるわけだが、建設工事では、発注者が示す条件が不適切な場合には施工時に労働者の安全衛生の確保が困難になるということがあるので、労働安全衛生法第3条第3項において、建設工事の注文者等は施工方法等について安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないよう配慮しなければならないと規定している。具体的には、適切な工期を設定したり、工事の安全な施工に配慮した工法を選定したり、といったことがある。労働省としては、この規定に基づいて、発注機関との連絡会議等を通じて施工時の安全衛生に配慮した建設工事が行われるよう要請しているところであり、今後ともきちんとやっていきたい。 |