[ 今、好きな事 ]

ここは、今好きな事について考える場所です。

最近、物事に固執したり、深く考える事が少なかったように思います。それに気付いたら、同時に自分の中に主張すべきものも磨り減って無くなっている事に気付いてしまいました。なので、もう少し好きなものについて考える時間を取ってみようかと思ったのです。

ここは、そのための場所です。

さすがに更新は不定期になると思います。てゆーかこれで終わらないよう祈る。

  1. 2003-12-21 Train of Thought/DREAM THEATER について考える
  2. 2003-12-28 自分のヘビーメタル好きについて考える (2004-01-10加筆)
  3. 2004-03-28 好きな花について語ってみる
  4. 2006-01-03 私と本について

学生時代の頃は、本から得るものと言えば、それはネタでありストーリィだったと思う。私は文学というくくりがとても嫌いで、その単語を聞く度に "何をお高く留まっていやがる" と吐き捨てる思いでいた。そしてそれは、今も少なからずある。

言葉の味わいを求め、装飾過多になり、いやらしくなる文を読むのが嫌いだ。分かり難い隠喩を見るのが嫌いだ。文にはまず、伝えたい事を的確に伝える必要がある。

そして売り物にするならば、面白い必要がある。だからこそ、私は本に対して、着想とロジックと、表現力を求めている。

だが私の好みは偏っているし、シニカルだ。流行の作家なんて読む気がしない。だが奇をてらっていい加減な作家に手を出しても、大抵満足を与えてはくれない。むしろ憤りすら感じるのがオチだ。私を打ちのめす位の力量の作家が、私には必要だ。

だから、私が好む作家は少ない。そして好みにあった作家の本は、大抵一通り読み倒す。そういったピンポイント爆撃で穴まで開ける様な偏執的な読み方になる。

そういう爆撃を、今受けている作家が、エルロイだ。

エルロイの物に最初に触れたのは、その名を意識せず、そして触れた後も意識してはいなかった。劇場で観た L.A.コンフィデンシャルは確かに面白かったが、これが有名な原作に基いていたなんて、知りもしなかったからだ。

それから何年かが過ぎた。私は本屋で一冊の本を見つけた。1974 JOKER/デイヴィッド・ピース。乾いた本だった。言葉はぶつ切れで、ストーリィは何の救いもなく、ただ読む者を絶望に叩き込むだけだった。私はこの本に絡め取られた。シリーズ 4部を全て読む羽目になった。

この本の解説の中で、解説者はエルロイに言及していた。エルロイこそクライム・ノヴェルの第一人者だという触れ込みで。

読まねばならない、強く感じた。

即座に三省堂へ赴き、L.A.四部作の全てを揃そろえた。

ブラック・ダリア、ビッグ・ノーウェア、L.A.コンフィデンシャルと読み進めた。だが、ホワイト・ジャズにだけは、手が伸びなかった。諸般の都合はあるにせよ、こうしたクライム・ノヴェルを読むのに疲れてしまったからだと思う。こうして、四部作は一時本棚の奥へと追いやられた。

だが唐突に、私はホワイト・ジャズを手に取った。理由は、その前に読んだ本に欺瞞を感じたからだと思う。打ちのめされたかったからだと思う。

そして、打ちのめされた。

この乾いた文に、何の救いもないストーリィに、絶望させられた。

そしてこれがデイヴィッド・ピースの、1974 JOKER の原作である事を理解した。1974 JOKER は、言うなれば模倣であり、ホワイト・ジャズなくして作られ得なかった。あの、1974 JOKER の解説で書かれた、エルロイの四部作に対抗して書かれたという下りは、以前は理解できていなかった。エルロイはここまで乾いてはいないし、救いはないが達成感がある、ホワイト・ジャズを読むまではそう感じていた。だが、ホワイト・ジャズは、前三作とは趣が違っていて、達成感はどこかへ追いやられてしまう程、登場人物は皆ねじまがり、打ちのめされ、偏執していた。ぶつ切れの文で、ただ最悪のストーリィだけを叩き付けた。そして "聞いてくれ。" 全く同じだ。

この本の解説にはこうある。"エルロイは特別なのだ"。

聞いてくれ。エルロイについては、映画で触れ、他の作家から派生して触れと、やや偶発的に辿り着いた因縁がある。そしてまた、そんな因縁が起こった。

丁度ホワイト・ジャズを読み終えた年明け、本を今一度ブラック・ダリアに持ち変えて観に行った映画館。本を読みながら上映を待っている。幕が開き、予告が始まる。その中に。

"ブラック・ダリア"

震えた。

こんな偶然が、ありえるものかと笑った。

L.A.コンフィデンシャルの様な良作になってくれればいいと思う。傑作をコケにして欲しくないという一般的な気持ちもあるが、なによりここまで書いちまってもし映画がずっこけちまったら、最悪だからな。



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