1997年5月12日
環境庁大気保全局大気規制課長 様
アスベストについて考える静岡県民の会
アスベスト代替化政策についての回答のお願い
お聞きしたい内容は先にお届けしている質問とほぼ同じですが、質問内容を特定する必要があるというお話でしたので、回答していただきたい点を、下記のとおりお知らせ致します。
また、これに関連して、別紙にこちらで考えている代替化のための政策の案を、参考までに同封させていただきました。
代替化、またはその政策の必要がないと判断されている場合には、意味がないものですが、もし必要があるとお考えである場合には、このような政策が可能であるかどうか、併せてお答え下さい。
記
1 各省庁でこれまで行われたアスベストの代替化のための政策(調べていただいた結果の確認)
2 環境庁で行われたアスベスト代替化のための政策(お電話でお聞きした内容の確認)
3 アスベストの代替化に関し、次の点についての環境庁大気規制課の見解と、そのような見解を持っている理由
(1)アスベストの代替化の必要性についてどのように考えているか(2)アスベストの代替化を進めるための政策の必要性について、どのように考えているか。
(3)代替化を促進するための政策が必要と考えられる場合、そのための政策とはどのようなものか。
また、それは代替化促進のために、どのように役立つと考えているか。
以上
(別紙)
環境庁のおこなうアスベスト代替化促進のための政策について−提案とその理由−
1997.5.12
1 アスベスト代替化推進委員会(仮名)を作る。
構成員は、行政機関、企業、民間団体から選出し、ここで、お互いの代替化についての案を出し合う。
環境問題については、環境基本法や環境基本計画などによって、民間団体の参加や、各主体の相互の協力・連帯などが求められています。
また、近年、大気汚染防止法の改正などをめぐり、リスクコミュニケーションの必要性や、対話の重要 性が叫ばれています。 しかし、アスベスト問題については、これまで、政策決定のための委員会などの構成にあたって、民間団体の参加や協力が求めらることはなかったと思います。 今回の大気汚染防止法の改正に伴う、「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル」の作成にあたった「アスベスト飛散防止対策検討会」や、同法改正のもとになった報告書を作成した「建築物の解体に係るアスベスト対策検討ワーキンググループ」なども、官公庁など公的機関の職務にある人や、企業から選出された人によって構成されていました。 私たち民間人は、職場や普段の生活で、アスベストによる被害を受ける恐れがある一方、アスベスト製品や代替製品を使う消費者でもあり、場合によっては、他の人に被害を与える加害者の立場に立つ可能性もあります。 このように、アスベストに関してどのような政策決定がなされるのかは、一人一人にとって重要な問題になってくるので、その意味では、民間団体は、単に法的に求められている参加主体の一つとしてではなく、直接的に政策によって影響を受ける当事者として、政策の検討に際し、中心的な位置にいなければな ないように感じられます。 基本的な問題としても、このような重要な環境問題について、民間団体の参加を求めないで政策を決定し、結果について国民に協力ばかり求めるのはおかしいので、民間の代表者を含めて討論したりする場は、どうしても必要ではないでしょうか。 実際に、上記マニュアルの作成にあたって、もう少し前に意見交換の場を持っていれば、吹き付けアスベストと、アスベスト含有の吹き付けロックウールの商品名は、訂正できたと考えられる経過もあったようですし、そのような例から見ても、民間団体の持つ知識や情報が、政策決定に、現実に必要であるとい う事実もあると思います。 さらに、重要な地球環境問題として注目されている、「気候変動枠組条約 第3回締約国会議」にむけての、「気候変動/地球温暖化を防ぐ市民会議」などでは、環境庁をはじめとする行政と民間団体との協力体制が、極めて密接にとられているように見うけられます。 地球規模の環境問題で、他国からの関心も強いこのような国際的な問題だけでなく、アスベストなどの国内の環境問題に対しても、こういった取り組みが行われることは、たいへんに重要な意義があるといえのではないでしょうか。
2 アスベスト製品の使用規制、代替品の普及に関しての助成等の措置を講じる。および、代替化の達成目標をつくる。
平成8年度環境白書には、低公害車の普及に関して、自動車NOx法により、特定地域において使用規制や助成措置などの取り組みが行われたことが記載されています。
アスベストは、解体等により環境を汚染してゆく公害の一つと考えられますが、このような規制や、経済的な方法による代替化促進の措置は、これまでとられてきていないようです。
アスベストの場合、現在、主に使用されているのは一般建築物の屋根材とみられ、経済的助成によって、 消費者が代替製品に移行してゆくことは十分期待できるので、以下にあげる方法等も含めた、いろいろな 形の使用規制や助成措置を講じる必要があるのではないでしょうか。
また、CO2の削減などのように、具体的な目標を示すことが代替化の促進に役に立つことは明らかなので、代替化のための達成目標を作ることも検討してはどうでしょうか。
3 住宅金融公庫の融資条件の一つに「環境に有害な建材を使用しないこと」を加え、アスベスト不使用を融資条件に入れるように働きかけを行う。
または、公庫の割増融資の項目に、アスベストなど環境に有害な物質を使用しない建物を加えることを検討する。
公庫の割増融資においては、「環境共生住宅割増し」として、ソーラ住宅などの省エネルギー住宅が対象になっていますが、環境によい建材の使用などは対象にはなっていないようです。
環境共生住宅の推進には、環境の負荷を低減する住宅の建設も目的の一つに含まれているので、今後、アスベストを含まない製品を使用していることを融資の条件としたり、割増融資の対象とすることは、検討されてもいいのではないでしょうか。
この点に関連して、建設省の行っている住宅建設のコスト低減のための政策(“プラス・YOU”住宅 の推進等)が、アスベスト含有の屋根材などの人体や環境に有害な建材が、安価であるために、安易に使 用されることを促している実態があるのではないかと思うので、住宅価格の低減化を図る政策と、環境に良い住宅建設を求める政策の一致点を、もう少し真剣に検討する必要があると考えますが、どうでしょうか。
4 ノンアス製品を「エコマーク」の対象とする。または、環境に反する商品に付ける「反エコマーク」 を作って、アスベスト製品をその対象とする。
現時点で、エコマークがどの程度使われているのか、どの程度商品を選択する際の根拠になっているかなどはわかりませんが、アスベスト製品が環境に負荷を与えるものであることは事実だと思います。
その意味では、アスベストを含有しない製品にエコマークをつける十分な理由があると考えるのですがどうでしょうか。
5 環境税、課徴金など、現在検討中とされている課題の対象に、アスベスト製品を加える。
アスベスト製品の販売に対してかけられた税金や課徴金を、基金としてプールしておき、アスベストの飛散防止のための対策に使う助成金や、融資のための資金として利用するのは、合理的ではないかと思います。
企業が、安い価格で競争力を得て大量に販売した商品を、消費者が、知らずに買ってしまったことで、取り壊しなどの際に、高額な飛散防止の費用を一方的に負担しなければならないのは、不合理に感じられます。
企業は、環境に負荷を与える商品を販売したことによって、その結果生じてくる環境問題を回避するための費用を負担する必要があるというのは、現在広く認められる考え方だと思いますし、アスベスト製品をその対象に含めることは当然だと思います。
これに関連して、環境基本計画の第3章、第4節「社会経済の主要な分野における取組」、1「物の生 産・販売・消費・廃棄」には、生産者の役割として「建設業者」の項目があり、その中には「環境への負 荷の少ない原材料の使用」などとあるものの、アスベストについては触れられていません。
「屋上の緑化」や「合併処理浄化槽設置」など、かなり具体的な例があげられているので、このような箇所でアスベスト製品を使わないことも明記するように、検討することはできないでしょうか。
6 「国における率先実行計画」の内容に、アスベスト製品の不使用を加える。
同環境白書によれば、平成7年に「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組の率先実行のための行動計画」がつくられ、この計画や「環境基本計画推進関係省庁会議申し合わせ」によって、環境保全に役立つ取組を率先しておこなうため、様々な対策が取られているということです。
この取組の中には、「環境に負荷の少ない施工作業の実施」などとありますが、庁舎の建設にあたって は、自然エネルギーの活用、廃熱の利用、省エネルギー型の照明機器など、省エネルギー対策に重点が置 かれており、建材の安全性や、建築物によって生じる環境問題は対象になっていないようです。
アスベスト製品を使用しないことは、建設省をはじめとする各省庁などで取り組まれていると聞いてい ますし、県や市の庁舎でも使われていないとされ、環境に負荷のかからない建材を使用することは、すでに認められる方向にあるようです。
公共団体で実際に率先して取り組んでいる実態もあり、この率先事業の趣旨に合致しているので、このような方針を他の省庁にも徹底することは、必要でもあり、現時点で十分可能なことであると思います。
7 公害健康被害補償予防協会のおこなう、大気汚染の影響による健康被害を予防するための事業に、アスベスト代替化のための対策を含める。
大気汚染防止法などによって、アスベストの飛散を防止するための対策がとられているのは、アスベス トによる健康被害を防ぐことが目的であることはいうまでもないので、同協会の行う事業に、アスベスト による健康影響に関する調査研究をはじめ、キャンペ−ン、各種パンフレットの作成などによる知識の普及、研修などを含めてゆくことはできるのではないでしょうか。
8 アスベストの代替製品を研究、販売している企業の企業名と製品名などをリストにし、公表する。
現在、環境にやさしい企業の在り方や、環境に役立つ製品の販売など、いわゆるエコビジネスが社会的な関心を呼んでいるので、アスベストについても、代替製品の製造が環境への負荷の低減に役立っていることを認め、それを公表することは、このような方向を促すためにも意味があると思います。
また、消費者の立場に立っても、「アスベストには代替製品がないので、有害と知りつつやむをえずアスベスト製品を使っている」と考えている人も多いようなので、アスベストの代替品にはどのようなものがあって、どのように使用されているかなどの情報を与えることは、アスベストの代替化を進めるために、とても大きな力になると思います。
9 パンフレット、ポスター、テレビ、新聞などの広告を利用して「環境にやさしい住宅」について啓発す る中で、アスベスト製品の不使用を求める。
アスベストについては、大気汚染防止法の改正にもかかわらず、一般の関心や知識は相変わらず低く、ほとんどの人は「わが国ではもうアスベストは使われていない」とか、「学校のアスベストが10年前にあれほど問題になったのだから、当然、アスベストはもう使用禁止になっている」と考えているようです。
アスベストについての知識を広めてゆくことは、アスベストによる環境汚染を防止するために、現在最も必要なことであるように思われるので、代替化の基本的な対策として、上記以外にも、あらゆる方法をとって啓発に努めていただくことをお願いしたいと思います。
10 環境教育の一つとして、アスベストを取り上げる。
私たちの世代は、子供たちに、将来にわたってアスベストの飛散防止対策を求めてゆかなければなりません。
次の世代に過度の負担を強いることを、現在の世代を担うもの一人として申し訳なく感じますが、せめて今の時点でできることの一つとして、アスベストについて子供たちに知識を与え、将来の被害をできるだけ防ぐようにするため配慮してゆく必要があると考えています。
そしてまた、このような方法によって、将来の代替化を促進することも可能だと思います。
このような意味から、環境庁が現在行っている環境教育の中で、アスベストについて取り上げてゆくことはとても大切だと思います。
「こどもエコクラブ」をはじめ、現在行われている社会教育の一環として、地域のリーダー講習などいろいろな機会を利用して、アスベストについて積極的に取り上げ、教育することを考えていただけないでしょうか。
以上