保護される法人情報〜有害物質を排出する責任について考える 〜

−意見陳述(メモ)−


T はじめに

 1 時間がかかりすぎている点

 不利益処分に対する迅速な救済手段として設けられている審査会制度において、意見陳述まで1年4ヶ月が経過しているのは、制度の有効性から問題がある。
 様々な事情があることはわかるが、少なくとも意見陳述は異議申立ての日からそれほど時間を経過しない機会に行われるべきだ。今後は、できる限り早い時期に答申を出してほしい。

  処分の日  1999年2月5日
  異議申立て 1999年3月31日
  理由説明書に対する意見の提出 1999年7月15日
  意見陳述  2000年の7月18日

(同時期に静岡市に対して提出した異議申立ては、昨年12月に公開の答申が出され、既に公開されている。)

  処分の日 1999年2月3日
  異議申立て 1999年4月9日
  理由説明書に対する意見の提出 1999年8月2日
  意見陳述  1999年10月20日
  公開の答申 1999年12月15日
  公開決定  1999年12月22日
  公開    2000年1月17日

 2 静岡市情報公開審査会の答申について
 上記の静岡市に対して提出していた異議申立ては、建築物の解体改修工事等による特定粉じんの排出に関する届出書(特定粉じん排出等作業実施届出書)で、建築物の場所、注文者の氏名等が、本件と同じく法人等の事業活動情報にあたる(公開することにより当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上若しくは事業運営上に不利益を与え又は社会的信用が損なわれると認められる)として非公開となった事例であった。

 市の審査会は、「工事の場所や注文者、施工者といった情報自体は、秘匿性のある情報とは言えない」、「公開によって知られるところとなる事実は、法人が発注したアスベスト除去の工事の実施にあたり、適法な届出がなされたということのみであり、これはそれだけでは当該法人に不利益な評価となるものではなく、むしろ、公開により正確な情報が伝達され、公正な社会的な評価につながるものであると考えられる」として、公開が妥当との判断をした。
 同時期に、大気汚染防止法上のアスベスト(特定粉じん)を排出する企業の責任を問題にした事例なので、参考までに、答申と静岡市の決定通知書を資料として提出する。

 3 非開示理由の変更について
 1999年6月18日付けで提出した意見で述べているように、今回の異議申立てについては、当初示された非開示理由が、理由説明書において追加され、結果的に、異議申立て後に非開示理由の変更が行われた。
 非開示理由は、異議申立ての内容に影響を及ぼすので、異議申立て後の非開示理由の変更は認められない。

 しかし、理由変更が認められないからといって、現段階において非開示理由を訂正するなどして手続をやりなおすことになると、不服申立て人にいっそう不利益となる。このため、今の時点で理由の変更について手続を適正なものに改めることは事実上できなくなっている。
 今回はこのまま審議を進める他はないが、答申にあたっては、この点についての審査会の見解を明らかにしてほしい。
 さらに、今後はこのような非開示理由の変更は認めないこととし、決定通知や非開示の理由説明書において、記載に不備が発生することがないように、制度上の改善または事務処理手続の整備を行うように求めてほしい。


U 非開示決定に関する意見

 1 理由説明書において非開示理由として示された内容は単なるおそれや可能性にすぎず、「静岡県公文書の開示に関する条例第9条第3号でいう、「競争上又は事業運営上その他社会的な地位が損なわれると認められる」と判断するに足る理由は示されていない。

 この理由では、同号の非開示事項に該当するというためには不充分であるので、本件については原則公開の立場から開示すべきである。
 またもし仮に同号の非開示事項に該当すると認められる場合であっても、本件については、同号ただし書きのア「人の生命、身体又は健康を事業活動によって生ずる危害から保護するため、開示することが必要であると認められる情報」、もしくは同号ウの、これに準じる情報であって「開示することが公益上必要であると認められるもの」に該当するので、いずれにしても開示すべき情報と考えるべきである。

 以下、詳しくはすでに昨年7月19日に提出した「非開示理由の説明に対する意見」で述べているので、その文面を参照してほしい。

 2 同「非開示理由の説明に対する意見」の意見の要旨(3)では、有害物質に関する情報において、企業の責任や行政のあり方がどのように求められているのかという点について述べた。

 この点に関しては、意見提出後、いろいろな形で具体的な政策として現れてきている。
 中でも、昨年7月に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(通称PRTR法)が成立した。有害物質を排出する企業の責任、とりわけ、有害物質に対する情報を国民に対してどのように提供していくのかという考え方は、同法の成立によって今までと大きく変わろうとしている。

 有害物質を排出する企業の責任はどうあるべきなのか、企業や私達との関係、行政の役割はどうあるべきなのか、PRTR法に関連して補足する。

  (別紙) 

V 終わりに

 1 請求に至る経過と担当者との関わりについて

・請求に至るまで、またそれ以降も、担当者とは日常的に情報交流や意見交換を行っている。
・情報公開請求に至ったのは、それまでいろいろと説明を受ける中で、立ち入り検査の結果の公表ができなかったことから、担当者とも相談の結果、やむを得ず請求をきめた。
・情報公開請求や異議申立てを対立の場として捉えられることが多いので、今後の審議においてそのような誤解がないように、念のため付け加える。
・情報公開はあくまでも環境問題や行政に関する学習の場であるという姿勢は、一貫して変わりない。
 2 審査会の各委員に対するお願い
・事務局の職員といっしょに弁当を食べたり旅行に行ったりしないでほしいこと。
(このようなやり方で中立性を保つことは難しく、県民の信頼を得ることはできないため。)

・報道関係者が審査会の委員を勤めることはやめてほしいこと。
(特に今後インカメラ審議などが導入されることになった場合、守秘義務が保てるかどうかという問題が生じる。また報道機関の姿勢が問われる。)

・他の審議会の委員との兼任はやめてほしいこと。
(審査会の委員は他の審議会等のように、政策についての議論の場ではない。不服審査という重要な任務を担っているので、他の審議会と同じような感覚で勤めてほしくない。時間的にも兼任では制約が多くなる。)

・審査会自体の情報公開に努めてほしいこと。
(部分的であっても、議事録は公開すべきこと。審議や意見陳述なども可能な場合には公開とするべき。)

(2000年7月18日 13:50)

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