浜岡原発差止裁判に参加して−こんなことがよくわからない−(目次)
(8):不備?
(2002.10.9)
総会がだんだん近づいてきた。せめて、藤沢までたどり着くだけの元気は残しておきたい。
だが、静岡から藤沢まで、それほど遠いというわけではない。約130kmくらいである。想定東海地震の震源断層面の長さは、115kmくらい。私は、だいたいその長さの分を移動すればいいことになる。地震の時は、それだけの長さを持つ岩盤全体が、瞬時に約4mから5mずれるのだという。地球もかなりがんばっている。
津波について、現在の耐震設計審査指針では何も定めてはいない。
ただ、安全設計審査指針の「指針2.自然現象に対する設計上の考慮」の中に、「重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器は、予想される自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件、又は自然力に事故荷重を適切に組み合わせた場合を考慮した設計であること」という定めがあって、解説の中で、この「予想される自然現象」は、「敷地の自然環境を基に、洪水、津波、風、凍結、積雪、地滑り等から適用されるものをいう」とさられているにすぎない(*1)。
耐震設計審査指針の不備ということで言うなら、津波の想定や基準、評価方法について明確な定めがないということも大きな問題になるわけだ。
そのようなことから、耐震指針検討分科会では、津波の評価方法について、具体的な指針を明記すべきだとして、今後、(1)過去の津波評価、(2)津波シュミレーションによる評価、(3)設計津波高さの想定、(4)引き波に対する安全性、等の4点についての検討が必要とされている(*2)。
現在の時点で、津波についての安全性の審査が実際にどのように行われているのか、はっきりとはわからない。
平成13年の報告書に、「過去に発生した地震津波(歴史津波)及び海域の活断層による地震津波を対象とした津波シュミレーション解析等を行い、想定すべき最大規模の地震津波に対して安全性の評価をしていると考えられる」と記載されている程度だ(*3)。
しかし、過去に発生した地震津波がどうであったか、どこまで正確に津波の実像をたどれるかはかなり疑問だ。また、「海域の活断層による地震津波を対象とした津波シュミレーション解析」といっても、どのような断層モデルを使うか、どのような海底の動きを考慮するのか、それによって結果はだいぶ異なることになる。
地震による地形の変動もあるし、過去のとおりの津波がくるとは限らない。したがって、津波の想定にあたっては、相当の幅をもたせていなければならないはずである。
現実にはどうだろう?
1号炉、2号炉の津波の想定については、東海地震説が出される前に建設されていることもあり、設置許可申請書の記載内容が非常に簡略で、地震についての記載も少ないため、津波についてどのように想定されているのかについては、よくわからなかった。
昭和56年の3号炉増設の設置許可申請書には、「設計波高」の項で記載されており、津波の際の最高水位は、現在と同じく、最大T.P.+5.8m、古文書による判断を入れて+6.0mと予測している(T.P.は東京湾中等潮位を基準とする朔望平均満潮位)。
ここには、最低水位についての記載はなかった(*4)。
−つづく−
*参考1:
「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」
http://nsc.jst.go.jp/anzen/sisin/sisin002/si002.html
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*参考2:
原子力安全基準専門部会 耐震指針検討分科会 第4回会合
「耐震指針検討分科会において検討すべき項目の整理・分類(案)」
http://nsc.jst.go.jp/senmon/shidai/taisinbun/taisinbun004/siryo3.htm
「検討項目23 地震随伴現象」
http://nsc.jst.go.jp/senmon/shidai/taisinbun/taisinbun004/332.gif
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*参考3:
「平成12年原子力施設の耐震安全性に関する調査成果報告書」
平成13年3月(財)原子力発電技術機構原子力安全解析所 2-6頁
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*参考4:
「原子炉設置変更許可申請書(3号炉増設)本文及び添付書類の一部補正」
6-4-3 昭和56年10月
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「浜岡原発差止裁判に参加して〜こんなことがよくわからない〜」発表レジュメ
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