1999年度 厚生省 運輸省 環境庁 建設省 通産省 労働省 |
2000年6月14日(水)14:00〜15:00 地下会議室 1. 昨夏EUが2005年までのヨーロッパにおけるクリソタイル全面禁止を決定し、アスベスト産出=輸出国であるブラジルもEUの決定にならう意向を発表している。アスベストの禁止に向かう国際的潮流はもはや確定したと言える。 アスベスト禁止に向けたこのような国際的な情勢を踏まえ、日本においてもクリソタイルを含めたアスベストの輸入・製造・使用等の禁止を早期に実現するようイニシアティブを発揮されたい。国際的な情勢に関する貴省としての認識もお聞かせ願いたい。 【回答】 [要旨] EU等の動向についてはご指摘のとおりと承知している。しかし、特定の経済活動を禁止するということは、国民の経済活動に対するもっとも厳しい制限であり、慎重に総合的に検討する必要がある。われわれとしては、労働安全衛生法等関係法令に基づく適正な管理を進めていくという立場でやってきた。今般、PRTR法によって管理が一層強化された。そういった適正な管理に加えて、積極的に代替化を進めていく。 * 「EUの後に他の国がどこも続くという状況でもない」という発言があったが、一方で、アスベスト産出=輸出国の一角であるブラジルの動きについては、「先ほどちょっと業界の方からそういう動きがありそうだという話があった」とのこと。日本が突出して孤立している状況を真剣に受け止めるように指摘した。 * 基礎産業局化学物質管理課としてこの点について見解を求めたところ、 「化学物質管理促進法自体は禁止をすることを目的としたものではなく、もし禁止が必要であるとすれば他の法律、例えば、化審法のような―しかし、生産規制はあるが、これも禁止ということではない」としたうえで、ベンゼンの環境基準の例なども引きながら、全般的には禁止というのは重大なことで適正な管理というのが主要な方向であるような回答内容であった。 * 建築とくに解体・改修工事の現場では「安全、適正な使用」が現実とかけ離れていることは重ねて指摘した。 2. アスベスト製品の代替化促進に向けた施策の進展状況についてお聞かせ願いたい。 【回答】 [要旨] 中小企業近代化促進法に基づき、スレート業界について第3次構造改善支援事業を平成11年から5か年計画で進めている。第2次構造改善支援事業においては、無石綿ケイ酸カルシウム板を開発してJIS化した。 * アスベスト輸入量は、1998、1999年にはそれ以前に比較すると減少しているが、不況の影響によるもので、景気がよくなればまた減少が鈍るのか、それともこのまま減り続けると考えているのか? 「基本的には政府の法律に基づくものではないが、行政指導的なかたちで企業・業界の方々には国際情勢とか国内のこととかを踏まえて代替化、減量化を進めていくべきであるということはかなり前から申し上げている。業界側もそれなりに努力をされている。たしかに最近の不況の影響か業界の努力の結果かと言われれば、われわれは両方含めてのことだと考えている(「はっきりはわからない」という言い方もしている)。今年の輸入量は1-4月で33,274トンで、前年比82.9%ということで、減っている。石綿製品の生産量については窯業建材統計というのがあり、これによると、昨年は波形スレートが9,498千枚、石綿スレート板が32,358千枚で、前年と比較すると各々69.9%、75.6%と、かなりの減少がみられる。 * これまで通産省でも解体工事によるアスベスト飛散の測定実験などをやってきているのではないかと質したところ、これまでの「石綿含有率低減化製品等調査研究委託事業」の委託内容について、後日、以下のような内容が示された(報告には非公表のものもある?)。 [平成2年度] 中小企業のための石綿代替製品開発ガイドライン作成 [平成3年度] 平成2年度事業をうけて、実際の製造ラインで石綿代替製品・石綿低減化製品の試作及び耐候性試験の実施 [平成4年度〜平成6年度] 石綿代替繊維の研究 [平成7年度] 石綿含有製品製造企業及び工業用繊維の製造・含有製品製造企業に対するISO 14000シリーズへの取り組みに関するアンケート調査 [平成8年度] 石綿含有製品の加工時・解体時を想定した実験等により石綿粉じん発生量・濃度の測定評価及び施工実施責任者の意識確認アンケート調査 [平成9年度] 石綿含有製品の実際の作業現場での石綿粉じん発生量・濃度の測定評価及び建築材料のライフサイクルに関するアンケート調査 [平成10年度〜平成11年度] 石綿含有製品の経年変化による石綿粉じん飛散状況の測定及び工業用繊維の製造・含有製品製造企業に対するライフサイクルに関するアンケート調査 * 上記委託調査と合わせて、どれだけ代替化が進んだのかなどに関する、各企業等に対するヒアリングを毎年実施してきているとのこと(昨年は2社、毎年違っている、建材だけでなく)。毎年の輸出量のうち、日本石綿協会関係、同協会に入っていない(大手数社)が各々どれくらいを占めているかについては、各企業へのアンケートによる非公式統計をもっているようだが、内容は明かさなかった。 * これ以上の代替化の促進のためにはやはり法的禁止が必要、法的裏づけがなければこれ以上の業界への転換支援も困難であろうと指摘。 3. フランスのアスベスト禁止措置を技術的貿易障壁(TBT)だとしてカナダが提訴した件に関する世界貿易機関(WTO)の紛争解決処理機関(DSB)における処理手続の進行状況について承知していることをお聞かせ願いたい。 日本政府として、カナダの主張に反対し、フランス、EUを支持する姿勢を明確にされたい。 【回答】 [要旨] WTOの紛争解決処理手続においては、作業終了までは第三国に情報がほとんど流れてこない。本件についても同様で、パネルの報告が出たという情報も入っていない。 4. 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質管理促進法)」が2000年3月30日に施行された。石綿対策全国連絡会議の意見(パブリック・コメント)が採用され、第1種指定化学物質(PRTR―排出量等の把握・届出等の対象)にアスベストが指定され、「製品の要件」に「アスベストを含有する製品であって、取扱いの過程で精製や切断等の加工が行われるもの」が加えられたことは歓迎する。 @ クボタのコロニアルの製品パンフレットにアスベスト含有の表示がなされていない。「天然無機繊維」と表示されているが、これでは、アスベストが含有されていることを隠し、消費者を欺くものと言われてもやむを得ないだろう。アスベスト含有建材については、一般消費者向けにも、アスベスト含有率や有害性情報等を表示すべきである。本来法律によって対処すべきと考えるが、それを待たずにも、行政指導を行うようにされたい。 【回答】 クボタの広報に確認したところ、屋根材については3種類くらいのパンフレットをもっている。ひとつは一般消費者向け、もうひとつは工事業者、設計業者向け、もうひとつは施工マニュアル。ご指摘の「天然無機繊維で補強されている」というかたちで記されているのではないかと思うが、一般消費者向けのものは基本的にはユーザーに対する自社製品のPRという観点から作成し、その最必要となる情報を記載しているとのこと。工事業者向けの資料については、切断、作業時等の作業者の安全衛生の確保という観点から、アスベスト含有の有無、取り扱い方法等を指示している。企業としては、必要な情報を適切に提供していきたいとのこと。 * 化学物質管理促進法によるMSDSが一般消費者への情報提供を除外していることが問題との指摘に対しては、一般消費者への情報提供は「家庭用品品質表示法」とも重なる部分が出てきて「屋上屋を重ねることになる」という認識があるようである。 A 同法施行に関連した通達・通知等があればお示し願いたい。 【回答】 まだこういうものはない。 B 対象事業場の業種および数の見込みを示されたい。大気汚染防止法の「特定粉じん発生施設設置工場」との関係(重複状況等)についてもお聞かせ願いたい。 【回答】 数については現在判明していない。すでにお聞きと思うが、大防法の特定粉じん発生施設設置工場という観点では、環境庁から聞いた話だと266事業場、施設数だと2,119。 C PRTR対象事業者によるアスベストに関する排出量等の具体的把握方法についてお聞かせ願いたい。 【回答】 来年4月の施行に向けて、省令として「排出量算出マニュアル」を作成する作業を進めているところで、まだ具体的にお示しできるところまでいっていない。 * ワーキンググループ(?)で日本石綿協会にも声をかけてマニュアルについての勉強をしているとのことである。 D PRTR対象業種に含まれないこととされた建設業等、対象業種であっても裾切り要件からもれる事業者(常用雇用者20人以下、年間取扱量0.5トン未満)、アスベスト含有ブレーキ・ライニング等装着車輌の道路走行等や自然界に存在する非点源の排出源等から環境中へのアスベスト排出量について、状況をどのようにお考えか、また、どのように把握されるかお聞かせ願いたい。 【回答】 現在どういうふうにしてやろうかということを検討している段階。 * 建築解体、廃棄物処分場等からのアスベストの排出について、パブリック・コメントで出したわれわれの意見は対象業種として網をかけられたいということだが、法律はそうならなかったので、現行法を前提にすれば国の責任による推定を確実にされたいこと、それを可能・正確にするための基礎データの収集についても検討されたい、等要望した(建設リサイクル法が施行されれば建築物解体工事についての把握が可能になることも指摘した)。 E 化学物質管理促進法に基づくMSDS(化学物質等安全データシート)は、発がん物質については指定化学物質を0.1質量%以上含むものとされており、一方、労働安全衛生法に基づくMSDSは発がん物質についても1%超含有するものを対象としており、現場で混乱が生ずることが懸念される。労働省に対して、発がん物質については0.1質量%以上含有でそろえるように働きかけられたい。 【回答】 基本的には当方としてはアスベストは発がん物質だということで0.1重量%以上ということにしている。労働安全衛生法も横並びにという要望だが、当方としては答えられない。 (窯業建材課の方からは) 労働安全衛生法の規定もあり、従来(の行政指導が)1%ということであったこと、業界から聞くと0.1%というのは測定方法がかなり難しいというような状況だったので、0.1%というのはどうかという申し入れはしたのだが、そのように決まってしまった。コンタミ(製造段階での非意図的な混入)とかの問題が出てきたときにどうしたらよいか、などを心配しているところ。 F アスベストに関するMSDSには、肺がん、悪性中皮腫等を引き起こす発がん性があることを明示し、アスベストの含有率を表示させるようにされたい。 【回答】 最終的には省令で具体的な内容を決めることになるが、現在検討中。 G 化学物質管理促進法に基づく「指定化学物質等管理指針」(2000年3月30日付け環境庁・通商産業省共同告示)では、第2の2「化学物質の使用の合理化対策」の(1)のイ「代替物質の使用及び代替技術の導入」として、「指定化学物質等取扱事業者は、指定化学物質等の使用の合理化に資する代替物質の使用及び物理的手法等の代替技術の導入を図ること」とされている。この規定を活用して、アスベストの代替化を促進するようにされたい。 【回答】 アスベストの代替化ということだが、この化学物質管理促進法は、対象化学物質を世の中から摩擦しようという趣旨で作ったわけではない。アスベストは別にして、他の物質では動物実験レベルでしか有害性が確認されていないものもある。何らかの管理は必要であるが、廃絶しなきゃいかんというところまで厳しいものではなく、適正に管理していただきながら使っていただくということで、指針を出して事業者の自主管理を推進するということである。推進のためのひとつのツールとしては低利融資制度―企業政策融資金庫と中小企業金融公庫の方から低利融資制度を用意している。 5. 「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」制定の動向についてお聞かせいただくとともに、以下の点にご回答いただきたい。 @ 同法のもとで、アスベスト含有建設廃棄物はどのような取り扱いをされる予定かお聞かせ願いたい。 A 建設リサイクル法のもとで「解体工事業者の登録制度」が創設される予定とされるが、吹き付けも含めアスベスト使用建築物の解体・改修工事等はどのように取り扱われる予定かお聞かせ願いたい。従来要請してきたとおり、それらの工事を実施するものの資格要件の導入を検討されたい。 【回答】 [要旨] 本質的にはやはり建設省の所管である。 |