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Osasco アスベスト世界会議報告−6−

世界アスベスト会議
―過去、現在、未来―

(会議終了)



オザスコ宣言(案)

世界アスベスト会議の参加者を代表して、われわれはここに新たなネットワーク「世界アスベスト会議ヴァーチャル・ネットワーク」を構築し、それに参加することを宣言する。このネットワークのメンバーとしてのわれわれの最初の仕事は、このオザスコ宣言を発表することである。


われわれは、厳粛に以下の決意を表明する。
1. アスベストに反対する世界中のキャンペイナー、グループ、団体の連帯を促進する努力を支持し、参加する。
2. 内外の国々におけるアスベスト禁止を実現するためのキャンペーンを展開する。
3. 世界中に広められたアスベスト被災者の、多国籍企業の責任を追及し、その苦痛と労働能力不能に対する平等な補償のための闘いを支援する。
4. もはや信用を失ったアスベスト技術を第一世界から開発途上諸国へ移転しようとするアスベスト企業の企みを糾弾し、暴露する。
5. 法律的な決定、医学的研究、新たな立法等のアスベスト問題の進展に関する自由な情報交換を促進する。
6. 政治家、労働組合その他に、公正移行の政策を採用し、そのために、アスベスト作業および生命を脅かすような作業条件を段階的に廃絶する手だてを可及的速やかにとるよう働きかける。
7. 世界的状況のなかで、アスベストに関する諸問題とその解決策を考える。
8. おかれている社会的、文化的状況の相違を尊重しながら、世界中の仲間と連携して行動する。
9. ある国で成功し他の国でも応用できるようなアスベスト問題についての取り組みと戦略に関する個人的および専門的な経験を共有する。
10. アスベスト企業およびその継承企業の行動および利益について監視する。

*以下、今後確認がとれた参加者の署名がならぶ予定
Laurie Kazan-Allen, アスベスト禁止国際事務局(IBAS)
Fernanda Giannasi, アスベスト禁止ヴァーチャル・ネットワーク、ラテンアメリカ・コーディネーター
Eliezer Joao de Souza, ブラジル・アスベスト曝露者協会(ABREA)会長




世界会議を支えた女性パワー


世界会議の推進力となった3人の女性が並んで写っている写真をみつけました。Hazards誌第65号(Jan/March 1999)に掲載されたもので、アスベスト・マフィアと闘う「マフィア・バスターズ」というキャプションがついています。
写真左が、イギリスのローリー・カザンアレンさん。世界のアスベスト禁止活動家の貴重な情報源になっている「ブリティッシュ・アスベスト・ニューズレター」(http://www.lkaz.demon.co.uk/)の編集者。昨年末に今回の世界会議のことを知らせていただき、日本からの発表内容等を督促され、またアレンジしていただいたのもローリーです。アスベスト禁止国際事務局(IBAS)のウエブサイト(http://www.ibas.btinternet.co.uk/)を運営しているのも彼女であり、今回の報告もそこに掲載された個人的レポートも参考にさせていただいています。
写真中央は、フランスのアニー・デボモニさん。フランスをアスベスト禁止に導いたレポートをまとめた国立健康医学研究所(INSERM)の教授であり、フランスの安全センターに似た団体であるALERTおよびアスベスト被災者支援団体であるANDEVAの中心メンバーでもあります。

石綿対策全国連絡会議が1998年11月6日に開催した国際交流集会でフランスの経験を報告していただいたポール・ジョバンさんの師匠のひとりでもあり、彼に、日本に行ったら私たちにコンタクトしてみろと勧めてくれたのも彼女。今回私が英語で発表した全体会議の座長でもあったため、ポールに、「私の英語能力がだめなことを伝えておいて」とメールしたところ、「デボモニ先生は優しい方だから心配しなくていい」と励まされました。

写真右は、ブラジルのフェルナンダ・ギアナージさん。サンパウロ州の労働監督官であり、ブラジル・アスベスト曝露者協会(ABREA)を設立、アスベスト禁止ネットワーク(BAN)のラテンアメリカ・コーディネーターの肩書きももっています。 彼女のアスベスト禁止・被災者の救済を求める不屈の闘いはアスベスト産業の猛反発を買い、1998年に名誉毀損罪で告訴されましたが、内外から批判の声があがったこともあって、1999年1月に裁判所はこれを退けました。アメリカ公衆衛生協会(APHA)は、1999年の国際労働安全衛生賞をフェルナンダさんに贈っています。世界会議の間中、壇上からフロアから、訴え、叱咤し、鼓舞する彼女の姿は圧巻でした。発言のたびに会場からは満場の拍手がわき上がっていました。
この3人の女性たちが世界会議の推進力となり、実現し、支えたと言って間違いないと思います。あらためて敬意を表したいと思います。 (古谷杉郎)




ABREAの提案

過去5年間の取り組みを踏まえて、われわれABREAは、被災者が遭遇してきた困難を総括し、それらの諸問題を克服する新たな道を提示する義務がある。
われわれは、それゆえ、以下の提案を用意した。この「世界アスベスト会議―過去、現在、未来」において検討し、承認していただきたい。

● 社会保障年金の権利
INSS(National Social Security Institute[社会保障給付の実施機関のようなので、「国立社会保険研究所」と訳すと不適当?]は、ある使用者が提出した技術レポートに基づいて、条件付きで給付を認めた。エターニトが閉鎖された1993年以来、法律は特別年金の権利の認定のためにSB-40文書しか要求していないのであるから、ここで持ち出された条件は不法かつ不当なものである[意味不明?]。

● 胸膜肥厚の職業病としての認知
胸膜肥厚を有するアスベスト被災者の権利は、胸膜肥厚は労働能力を低下させないという医学論文を理由にして、現在認められていない。被災者がこのような医学論文に対抗できる専門的な文書を手に入れる必要があり、かかる見解と論争する論文を医師たちが提供することが重要である。

● 労災給付
INSSは、労働能力に影響を与える状態ではないという理由から、アスベスト被災者への労災給付の認定を拒んでいる。INSSにこのような手続[?]を降ろさせるために、労働組合運動と協力して、医学的、法律的な証拠を提出しなければならない。

● 法廷外協定のレビュー
数多くの被災者がその使用者との間で法廷外協定に署名してきたが、これらの協定は決定的に検討されておらず、司法審査も受けていない。こうした同意は強制されてなされたにすぎないのであるから、たとえすでにかかる契約に署名している場合でも、被災者が企業から補償を獲得するための請求を行うよう促進しなければならない。

● 不当な裁判事例のレビュー
企業やINSSを相手取った裁判も数多く提起されたが、提出された医学証拠がアスベスト曝露が疾病の原因であることを立証できていないという理由で、裁判所によって退けられている。こうしたケースはできるだけ速やかに再検討され、証拠を提出できるようにすべきである。疾病がどのように進行し、障害がどのように増大したかを示す新しい検査結果による医学的証拠に基づいた新しい請求を支援しなければならない。
以下のことが必要である。

・ 政府および労働組合運動と協力して、「アスベスト被災者援護基金」の創設に向けた調査研究。このような基金は、健康、社会福祉、環境法令に組み込まれ、国内および国際的な情報経験の交換および同意形成によってつくられるだろう。

以下の情報を提供する「コンピュータ・データベース」の構築
疾病の診断事例の登録
法律文献および判例集
医学文献集
アスベスト禁止の取り組みを継続させていくための国際的な事例の記録
・ 世界の環境、公衆衛生、労働関係団体との交流の強化
・ 国内および国際的レベルでの医師および弁護士との連携
・ ABREAの本部への最新の事件簿の整備しておくように弁護士への要請
・ 労働災害調査および補償に専門的援助を提供できるような医学専門家との連携の追求
・ アメリカ、フランス、ベルギー、スイスに本拠を置く多国籍企業への補償請求に関する議論の深化
・ アスベスト採掘・加工企業はあらゆる環境への損害に対して責任を負うべきである
世界的アスベスト禁止のために闘い続けよう!




世界的アスベスト禁止に関する労働組合の声明

世界アスベスト会議に参加した労働組合は、すべての種類のアスベストおよびその関連製品の採掘、製造、流通および使用の世界的禁止に関する自らのコミットメントについてあらためて宣言する。

以下のことは事実である。
・ アスベストはいかなる種類であっても発がん物質である。
・ アスベストは公衆衛生および環境に対する脅威である。
・ 法律的には、発がん物質の最も効果的な管理は、それらを他の相対的に有害性の少ない代替品で代替することである。

世界中におけるアスベストの製造および使用のプロセスをめぐる複雑な経済的、社会的諸問題を考慮して、[本国際会議に参加した]労働組合は、[世界中の]労働組合によって以下の方策が講じられるよう提案する。

・ アスベスト禁止: 労働組合は自国政府に対して、世界中でアスベストを禁止するための国際的イニシアティブの一環として、アスベスト禁止を導入するよう働きかけるべきである。
・ 労働者防護: 労働組合は自国政府に対して、作業中にアスベストに曝露する可能性のある労働者を防護するための最低の基準として、ILO第162号条約を批准し、効果的に適用し、遵守させるように働きかけるべきである。労働組合は、アスベスト繊維への曝露を予防する最良の方法を、アスベスト除去作業をしなければならない労働者が確実に利用できるようにしなければならない。
・ 注意喚起: 労働組合は、アスベストに曝露することのリスクと健康を守るためにとられるべき手段について労働者、労働組合運動および市民を教育し、アスベストの世界的禁止を実現するための広範囲にわたる国際的キャンペーンを創り出し、また、持続すべきである。
・ 代替化: 労働組合は、人間の健康と環境にとってより有害性の少ない代替物質によるアスベストの代替化を追求しなければならない。現在アスベストの代替物質が存在しない分野における代替物質を開発するテクノロジーに対して調査研究が促進されるべきである。
・ 情報交換: アスベスト代替品を製造・使用している国の労働組合は、現在それらの代替品を製造・使用していない国の姉妹労働組合に、それらの代替品に関する技術的情報を提供すべきである。
・ 公正移行: アスベスト禁止によって労働者が職を失う可能性のある場合には、労働組合は、影響を受ける労働者および地域社会の収入、雇用および福祉を守るための公正な移行[just transition]を働きかけるべきである。
・ 法的行動: 労働組合は、自国の法システムを通じて、その怠慢によってアスベスト疾患や地域社会の環境への損害を生じさせた使用者が裁判にかけて処罰されるよう追求すべきである。その事業による環境への損害を回復するための費用はすべて汚染者が負担しなければならない。
・ 補償: 労働組合は、アスベスト関連疾患に罹患した労働者に対する適切かつ迅速な補償を追求すべきである。
・ 治療: 労働組合は、アスベスト関連疾患の被災者が適切な治療、支援サービスおよび情報に確実にアクセスできるようにキャンペーンすべきである。

2000年の世界アスベスト会議に参加した労働組合を代表して、[以下の者が]署名する
。Edison Luiz Bernardes, CONTICON/CUT,ブラジル
Wellington Carneiro, IFBWW(国際建設・林産労働組合連盟)ラテンアメリカ地域事務所, パナマ
Fiona Murie, IFBWW(国際建設・林産労働組合連盟)中央本部, スイス
Jose Elias de Gois, CISSOR, ブラジル
Jose Augusto da Silva Filho, FENATEST/CNTC, ブラジル
Nick De Carlo, CAW(カナダ自動車労働組合), カナダ
Rory O'Neill, IFJ(国際ジャーナリスト労連), イギリス
Nigel Bryson, TUC(労働組合会議), イギリス
Bruno Pesce, CGIL, イタリア
Lars Vedsmand, NFBWW(ノルディック建設・林産労働組合連盟), デンマーク





オザスコ市長の宣言

2000年9月17-20日に開催された「世界アスベスト会議―過去、現在、未来」のホストを務めるという、わが市にとって重要なこの瞬間に、
・ アスベストの人間の健康に対するハザーズに関する議論に鑑み、
・ 本会議において発表された科学的調査研究の結果に鑑み、
・ 報告された他の諸国における実践的な取り組みおよびアスベスト禁止に鑑み、
・ この注目すべき会議で発表された提案および結論に鑑み、
・ アスベストが公衆衛生問題であることに鑑みて、
私は、ここに本会議の閉会を宣言します。
私は、法律関係部局および立法に関する技術的助言部局に対して、すべての種類のアスベストを含有する物の使用を禁止する立法をオザスコ市議会に提出する声明を作成するよう求めました。
この禁止措置は公共部門と民間部門の双方を網羅し、建設局長によって施行される地域建設規則に組み込まれることになるでしょう。
私はまた、地球規模のアスベスト禁止を支持するという私の姿勢をあらためて表明します。
私たちはひとつの自治体レベルでしか行動できませんが、私たちの取るこのステップは、人間の健康および環境に重大な損害を与えてきたアスベストに反対する気高い闘いを強化し、その大きな流れに統合されていくものと信じています。
オザスコ、2000年9月20日
市長 Silas Bortolosso



ILO、WHO、OPAS宛ての手紙

世界労働機関(ILO)
世界保健機関(WHO)
Organizacion Pan-Americana della Salud(汎米労働機関、OPAS)

2000年9月17-20日にブラジル・オザスコで開催されたアスベスト国際会議の副議長、および、世界中のアスベスト被災者を代表するアスベスト禁止ネットワーク(BAN)のラテンアメリカにおける事実上のコーディネーターとして、アスベストの国際的禁止の闘いに献身している35か国以上、300名をこす代表者が参加した、今世紀末のアスベスト問題に関する最も重要なイベントであるこの国際会議において承認された最も重要な文書について、謹んでお知らせいたします。
私たちは、オーストラリアの全国労働安全衛生委員会(NOSHC)ができるだけ早くアスベストおよびアスベスト含有製品の輸入を段階的に禁止することを検討していることを知りました。こうした決定は確実に、日本や他のアジア諸国、ブラジルや他のラテンアメリカ諸国が同様の追随をするうえで影響を及ぼすでしょう。
国際アスベスト会議の議長でもある、ブラジル最大の産業都市のひとつであるオザスコ市の市長は、会議の最後に(添付文書にあるように)、早急にアスベストのない世界をかちとるための国際的な努力に私も加わっている、と述べています。
あなたの組織が、全世界の人類を防護するための現在の知見に基づいて、これらの文書を支持し、地球規模のアスベスト禁止を支持するという明確な姿勢を表明していただくよう、心から希望します。
全世界のすべての人々のための社会、環境上の正義に関するあなたの高貴な精神を信頼しております。
                                            フェルナンダ・ギアナージ

* 「労働組合の声明」(18-19頁)、「オザスコ市長の宣言」(25頁)、「ABREA(ブラジル・アスベスト曝露者協会)の提案」(15頁)を添付




オザスコ市で国際アスベスト会議、日本からも出席
サンパウロ新聞 2000年9月26日

発ガン性物質であるアスベストの禁止を訴えようと、オザスコ市で17日から3日間、「国際アスベスト会議」が開催され、日本からも石綿対策全国連絡会議(富山洋子代表)の古谷杉郎事務局長ら4人が出席した。23日、古谷事務局長らは、同会議での報告やアスベストの危険性について記者会見を行い「ブラジルでは、アスベストの危険性が一般には認識されておらず、建材として非常に多く使用されており危険」と強調していた。

オザスコ市での同国際会議は、ブラジル・アスベスト被災者協会が主催し、30数カ国から約300人の科学者、労働者、医師、政府関係者、アスベスト疾患の被災者らが出席した。オザスコ市長が議長役を務め、17日から20日まで、各国のアスベスト問題の取り組みなどを検討した全体会議などの他、「補償問題」「公衆衛生問題」「治療・診断」などの個別ワークショップも行われた。

同会議には、日本の石綿対策全国連絡会議の代表団である古谷事務局長、永倉冬史さん、名取雄司さん、中地重晴さんの4人が参加し、「日本におけるアスベスト問題の状況と取りこみ」について発表した。さらに、23日、同一行は邦字紙に対して記者会見を行い、同会議の報告とアスベストの危険性を訴えた。

古谷事務局長によれば、ブラジルは、ロシア、ジンバブエ、カナダに次ぐ世界第4位のアスベスト産出国。「インドや日本等に輸出していると同時に、自国においても、波型ストレートなどの建材に使用している」と説明し「オザスコ市では、以前スイス資本の会社が五十年に渡って同建材を製造していたため、同市やサンパウロなどで、いまだ大量に使用されている」と指摘している。「街を歩いていても、あまりにも多く見かけるので驚いた。一般の人にも危険性をもっと認識して欲しい」と訴えていた。

また、「今回の国際会議では、アスベストを完全禁止することこそが唯一の解決策であり、子供たちの将来を救う道である」と強調。「ブラジルのアスベスト産業のメッカでもあるオザスコ市では、たくさんの労働者や住民が曝露し、健康被害が拡大していることを知って驚いた。同時に被害者団体が、労働組合や市民団体と共に、将来の子供たちの命を守るために真剣に取り組んでいることに感銘した」と語っていた。
ILO(世界労働機関)の発表では、毎年世界中で約110万人が、労働災害・職業病で命を失っており、この内アスベストだけで10万人が亡くなっている。日本国内でも毎年数千人がアスベストによる癌で死亡しており、証拠も明らかになっているが、政府だけでなく社会的な関心も低いのが現状。

アスベストは石綿とも呼ばれる天然の繊維性鉱物。断熱性に優れており加工しやすいため、ボイラー周囲の断熱材や建材などに使用されている。発ガン性が高いため、アスベスト材などを加工する時に、粉塵を吸い込むと肺ガン率が高くなる。潜伏期間が長く、数十年を経てから発病するため「静かなる時限爆弾」とも呼ばれている。




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